- 書名: 喜劇悲奇劇 (ハルキ文庫)
- 作者: 泡坂妻夫
- 出版社: 角川春樹事務所
- 出版日: 1999-05
- 定価: ¥ 987
- この本の詳しい情報(Amazon)はこちら
レビュー
全編“回文尽くし”の異色作
奇術師やアクロバットダンサー、猛獣使いなどの芸人たちが結集したショウボート
〈ウコン号〉の興行初日間近の台風の日、奇術師が何者かに刺され、海中に転落
した。その後、事件は連続殺人へと発展したのだが、奇妙なことに、被害者たちは
全員、上から読んでも下から読んでも同じに読める回文名を持つ者ばかりで……。
タイトル、章題、そして最初と最後の一行まで回文で揃えた“回文尽くし”の異色作。
回文名を持つ者ばかりが殺されるという荒唐無稽にも思える状況については、座長が
縁起を担いで芸人の芸名を改名させたという無理のない説明がなされており、趣向の
ための趣向とならないよう、配慮がされています。
また、回文だけでなく、殺人事件についても趣向が凝らされており、犯人を容疑圏外
に置く技法や、犯人を限定するための手がかり(内線電話の故障)、そして芸人たち
それぞれの芸に対応した殺害方法などに作者ならではの冴えたテクニックが光ります。
