やまなし (画本宮沢賢治)

レビュー

水の中の世界が絵とぴったり嵌っていて幻想的

谷川の底に住んでいる蟹のお話です。
青い幻灯で写された五月と十二月の二枚の川の底。
川底から子どもの蟹が見あげる景色の幻想的な美しさと相まって、弟蟹の外界に対する好奇心や憧れや恐怖などが、賢治独特の詩的な言葉のひびきのうちに表現されています。
特に、五月の弟蟹の死への恐怖や十二月の流れてきたやまなしを追っていく三匹の蟹の姿など、画もまた、ほんとうに青い幻灯に映し出されたもののような気がします。詩的な時間を堪能できると思います。

版画

宮沢賢治の世界は、私の中では少し薄暗い夜の世界にあります。
小林敏也さんの版画?が、黒、白、青などの寒色の、まるで宇宙の中のような挿絵で、あまりにイメージにはまりすぎていて深い感動を覚えました。

その絵にはとても動きがあり、私は特に「魚がこんどはそこら中の黄金の光をまるっきりくちゃくちゃにしておまけに自分は鉄色に変に底びかりして、また上の方へのぼりました」の、魚が泳いでいるシーンの水のうねりや、
かにの親子がやまなしを追っていくときに出来ている影が好きでした。

文字は深緑?に白抜きと、藍色にグレーがかった水色で書いてあります。それでまた文章を厳粛(大晦日に家で静かに除夜の鐘を聞いているような)気分で読ませてもらいました。
唯一私的には、表記が原文を()つきにして現代語をメインにしてあるので、逆であれば・・・と残念に思いました。