阿部一族 (SPコミックス)

レビュー

うまくまとめられた佳作

佐藤の作画は、とても軽い。だが逆に線の抑えられた彼の絵が、本作を読みやすくしている。オリジナルエピソードの扱いもうまく、テーマを深めるのではなく、本作をリアルにする効果をあげている。
最近の「乱」の原作突きの連載作品は構成に優れたものが多い。本作も合格点であろう。
しかしどうも時代考証があちこちで甘く、テレビや映画の時代劇からそのままいただいたようなところが気にかかる。読み手によっては、その点が致命的

力不足では?

原作も、テレビ映画も面白く見る事のできた作品なのに、
この読後感のモヤモヤは何なのか
淡々とした画風の作画は物語の芯を外して、
原作にあまり関わりたく無い、仕事としての作画にしか感じられなかった
(特に肝心な場面での登場人物の”顔無し”表現は理解出来ない)
これが別の漫画家の手によればもっと違うのでは…と考えさせられた

森鴎外の世界を見事にビジュアル化しました。

明治の文豪、森鴎外の歴史小説を、佐藤宏之氏が見事に漫画化されました。
鴎外の世界をビジュアルな読み応えある作品として、現代に甦りました。
リイド社の「コミック乱」で一年掛けて連載されて、遂に単行本化され嬉しい限り。

深遠なる森鴎外の世界に入る、取っ掛かりには最適です。

煩悶するサムライ、動揺する武士道

短編である。けれど、時おり難解な文字にぶつかる。そこは
仕方ない、読み飛ばしても支障ない。

サムライと殉死の問題を扱った本書。乃木希典が明治天皇に
殉じたときの「潔さ」とは打って変わって、「殉死」するにも
できなかったサムライの話である。ちょうど乃木の殉死騒動に
前後して書かれた本作は、当時の現実社会に対する鴎外の
メッセージともとれるのだろう。

そんな背景は抜きにしても、本作は文句なく面白い。

江戸時代当時、家来は、まだ生きているときのお殿様に、
「上様がお亡くなりになったら、後を追って死んでもよいで
ござるか?」とのお伺いを立てねばならなかったらしい。
(少なくとも本作ではそのような設定である)

それで「よいぞ」と答えられれば「無事に」殉死できるのだ
けれど、本作の主人公、殿様に疎まれていて、OKサインが
出なかった。そして、いざ殿様が死んで、周りの重臣たちが
後を追って死ぬ中、主人公が取った行動とは……

紋切り型の「義理」的サムライ像をくずす、もっとえげつない
人間的なサムライを書いた鴎外には「はは〜」と、こうべを
垂れたくなった。

サムライ、ハラキリ、フジヤマ〜といったステレオタイプな
日本像を抱く外国人にこそ、分かりやすい翻訳で読んでもらう
べきなのかも。あるいは、そんなステレオタイプな日本像作り
に一役買っちゃう「美しい国」ラブな方々にも。冷静にハラキリ
を考えよう、みたいな。

臨場感、リズム、迫力。どれをとっても珠玉の一作。