日野啓三短篇選集〈下〉

レビュー

<リアルな幻想>を語る岩のような風格のある文体にどっぷりです。

抗ガン剤投与の苦しみの中から不如意に目覚めてくる幻想のリアルさが、日野啓三の作品全体を貫いています。ある直感というか、本能のようなもの。都市の腐ったゴミ捨て場の中で、静かに発酵し、変質してゆくなにか、それ自体が生きる力をもって自在にメタモルフォーゼして行く都市という幻影を、日野独特の固い文体によって描き出しています。作品の異様な美しさに、思わず息をのみます。