- 書名: 都市という新しい自然
- 作者: 日野啓三
- 出版社: 読売新聞社
- 出版日: 1988-07
- 定価: ¥ 1,470
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レビュー
「都市」に対する新鮮でポジティヴな認識を
本エッセイにおける日野氏の見解では、「都会」と「都市」とでは、意味合いが微妙で重要に異なります。
「都会」が何となく人間が群がり用も無いのに道を歩き回る場所だとしたら、「都市」は街路から人の姿が消え、高層ビルが林立し、そこを見えない情報が飛び交い渦を巻く場所を指します。具体的に言うならば、前者は渋谷や新宿などの繁華街のイメージで、後者は千代田区辺りのイメージといったところです。
「本来の自然(荒涼としたカオス)→農村的自然(花鳥風月的田園風景)→都会→都市(鉱物/逆説的に、最初の「本来の自然」に近づく)」という、「自然」の段階を提示し、「私にとって都市も自然だ」と断言する日野氏のこういったオリジナルな思想は、「都市」に暮らす人間にとっては、異端ではなく、寧ろかなりしっくりと共感出来るものです。
私としても、田舎から東京に出てきて、東京に対する認識が、かなり変わりました。東京に出る前は、「東京=渋谷・新宿=危険/田舎=自然=安全」という、二項対立的な先入観があったのですが、実際のところは、全くもってそうではありません。渋谷や新宿は確かに危険な側面もあるのでしょうが、私が現に生活している文京区や、隣の千代田区は、安全であるけれど、ヒリヒリと荒涼な都市感覚が身に染み入るような場所です。しかしながら、今では私は、この鉱物化した神経質で魅力的な「都市」での暮らしに、非常に愛着を持っており、恐らく私も日野氏のように、もう田舎では暮らせないというような状態です。
いずれにせよ、眼から鱗が落ちるような「都市」に対する新鮮でポジティヴな認識を本書によって読者は得られ、そしてこの「都市」に対する捉え方は、本書が出版されて丁度二十年が経ち、さらに鉱物化が促進された「都市」を有する今の時代に生きる我々にとって、かなり有効で普遍化された思想と成り得るものだと言い切ることが出来ます。
