- 書名: グスコーブドリの伝記―猫の事務所・どんぐりと山猫 (扶桑社文庫)
- 作者: 宮沢賢治
- 出版社: 扶桑社
- 出版日: 1995-07
- 定価: ¥ 550
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レビュー
賢治には"ますむらひろし"の描画が良く似合う
「ますむらひろし、宮沢賢治を描く」シリーズ第3段。今回の対象は「グスコーブドリの伝記」。ブドリは賢治自身を投影したもので、自らの事ではなく、貧しい農民の事を考え研究に努め、最後は究極の自己犠牲に至る姿を、ますむらは「アタゴール」の住人の姿(猫)を借りて、牧歌的で感動的な物語に仕上げている。
飢饉で苦しむ東北の農民達。そんな苦しみを救うため、農業・科学の研究に努め事態を改善しようとするブドリ。賢治の特徴でもあるが、ブドリも実践を大事にする。そんな努力が実を結びつつある所へ、運命のイタズラで火山の爆発場所を変えるためにブドリは究極の自己犠牲の行動を取る。賢治の実践を伴った自己献身の姿が、ますむらのファンタジー溢れる描画と相まって、読むものに深い感動を与える。
同時収録の「猫の事務所」における狭い人間関係の中での人の身勝手な思惑への風刺、「どんぐりと山猫」の賢治らしい童話における、トボケタどんぐりや颯爽としていながら何処かオカシイ山猫の様子、そして本当の意味が謎に包まれた全体構成がますむらの絵とベスト・マッチで一風変った味わいを与えてくれる。
賢治の作品の登場人物を猫にする違和感は全く無く、逆にこうする事によって賢治のファンタジーとますむらのファンタジーが相乗効果をあげて、本作を幻想的でありながら感動的なものにしている。子供から大人に至るまで読んで欲しい、楽しみながら深い感動が味わえる傑作。
勤勉な猫の童話。
私もこの本を読んだきっかけがプラネテスの話の中で出てきて、どんなものかと思ったからです。
人生に困難は付物ですが、グスコーブドリの人生も例外にもれず厳しさの連続のようでした。
ただ、凡人と違うところはそこで頓挫せず、強く前に進む道を選び続けたというところです。
どこまでも建設的な人生を送り、そして最後は自分の身を犠牲にして街のみんなを救った。
そこで話は終わってますが、とても切ない気持ちでいっぱいになっちゃいました。ほんと切ないです。
私をこんな切ない気持ちにさせたので星ひとつ減らして3つです。(泣
優しすぎる主人公に涙がでてしまう
「グスコーブドリの伝記」は、幼い頃両親と妹と別れてしまった主人公ブドリの一生が記されています。辛い日々と努力を重ねて大人になったブドリは妹と再会。しかし、そこに危機が訪れます。ブドリは最愛の妹と世界の人を救うため命を賭けた大仕事に向かいますが・・・。同じく収録されている「猫の事務所」。事務所の中で人一倍頭がよくて誠実な「かま猫君」は、「かま猫種」であるためにみんなからバカにされています。仕事のできない、誠実でない「みんな」はなぜか結託して「かま猫君」を陥れます。
誠実な善人が排斥され、悪人が世にはびこる図が描かれています。
私たちの職場や生活の中でも、このような図はよく見られます。何ともいえぬ悔しさとやるせなさ、世の中の不条理な一面。思わずあなたも、「かま猫君」を応援したくなるはずです。
そして、このやさしい「かま猫君」は毎日残業に追われ、不満を抑えながら勤めるサラリーマン、一生懸命、家族のために働いているあなたの優しいおとうさんの姿かもしれません。
『猫の事務所』が一押し。
超短編で傑作なのが『猫の事務所』。でも意外に知られていない。『風の又三郎』と『銀河鉄道の夜』と『雨ニモマケズ』ほど有名ではないけど、『猫の事務所』、宮沢賢治の優しさとピュアさが結晶しています。人間の偏見社会と見栄社会を見事に風刺した、でも、泣ける作品です。10分で読めるから、できるだけたくさんの人に読んでほしい。
プラネテスを読んで
木星へ有人探査船を送る幸村誠さんの『プラネテス』のモーニングでの連載を読んでいて、その巨大エンジンを設計するロックスミスさんと同僚の科学者とのエピソードを読んで、無性に宮沢賢治を読みたくなった。というのは、人類の夢のために、人生と命を全て捧げる暗い(なぜかそう感じてします)情熱に背中を押し続けられるブドリと全く同じ姿勢に見えたからです。宗教学者の中沢新一さんという人が、賢治の科学者としての側面は、大正時代の純粋に科学で人類を変革できると考えたファシズムと同型のものなのだが、それゆえか、それなのにか、純粋であまりにキラキラせつな的で美しいというのを聞いたことがあります。なぜか、それを思い出しました。
