- 書名: 煙の殺意 (創元推理文庫)
- 作者: 泡坂妻夫
- 出版社: 東京創元社
- 出版日: 2001-11
- 定価: ¥ 651
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レビュー
確かに、あらゆるところにからくりが有った!
そもそも私が泡坂さんの作品に興味を持ったのは、ある日何気なく見ていた新聞の記事でした。そこに紹介されていたのはこの「煙の殺意」ではなく、「しあわせの書」だったのですが、それを手に入れようとしてついでに買ったのが「煙の殺意」でした。読んでみるとなるほど、新聞に紹介されていた通り、泡坂さんの小説はどれもそこかしこに様々なからくりが仕掛けられている感じで、正直言えば、一回で読むのをやめるより二度三度読み直してそのからくりを味わったほうがいいのかなという感じです。それほど奥が深い。いずれにせよ、他の作品も読んでみようと思います。
紅葉の山に雪を訪ねる
◆「椛山訪雪図」
▼あらすじ
美術品蒐集家の家に強盗が入り、お手伝いの
女性が殺され、二幅の軸が盗まれた。
そのうちの一つは北斎の雪山図だったのだが、
なぜか後に書庫で発見される。
その代わり、雪山図と構図や、人物・風物の配置を
同じくする「椛山訪雪図」が紛失していて……。
▼感想
「椛山訪雪図」の「紅葉の山に雪を訪ねる」
という画題に秘められた二重の意味とは?
そして、蒐集家が呟くように口にする其角の
「闇の夜は吉原ばかり月夜哉」に込められた感慨とは?
芸術の趣向と、現実の強盗殺害事件の構造が
二重写しに読者の眼前に示される謎解きの瞬間は、
まさに著者の真骨頂です。
軽妙にして洒脱な話運びと、にじみ出る教養。
著者の数ある短篇のなかでも、
頂点といっても過言ではない傑作です。
名品「椛山訪雪図」が、格別、素晴らしい。
落語の名人が語る噺の旨味と、トリッキーな仕掛けの妙が味わえるミステリー短編集です。抑制の利いた文章のたたずまい。
さり気ない話の伏線が、後でとんでもない絵柄となって現れる騙し絵の構図。
上質のミステリーを読み、味わい、楽しむひとときを満喫しましたよ。
収録された八つの短編のなかでも、直木賞候補作となった「椛山訪雪図」、花見の季節の公園を舞台にした「紳士の園」、殺人事件の現場でデパート火災を中継したテレビを見ながら事の真相に至る刑事の話「煙の殺意」の三編の出来映えが素晴らしく、これは!と唸らされました。
とりわけ、「椛山訪雪図」の話の風情が素晴らしい。読むのは今回が三度目くらいになるのかな。しみじみ、このミステリーは良いなあと魅了されました。
今まで読んだ国内ミステリー短編のなかでも、私の中では三本の指に入る名品。未読の方には、ぜひ一度ご賞味くださいとお薦めいたします。
キレの良い短編集
江戸時代の画家の描いた絵に隠された謎を解き明かす名作「椛山訪雪図」、行儀の良い人ばかりの集まる公園の秘密「紳士の園」、完全に見えた殺人計画が思わぬところからバレてしまう「歯と胴」など、毛色の変わった謎を推理によって思いもよらない解決をみせる、といった短編のお手本のようながら、それでいて著者にしかまず書けないようなミステリ8編が収められた短編集。中には、都合が良すぎる、推理が飛躍しすぎというところもあるのですが、語り口が絶妙で、読んでいる最中には全然気になりません。
発表が1976~80年にかけてと、一昔前の短編ばかりなのですが、今読んでもとても新鮮、キレの良さがすばらしい。読んで損のない短編集です。
