- 書名: 亜愛一郎の逃亡 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
- 作者: 泡坂妻夫
- 出版社: 東京創元社
- 出版日: 1997-07
- 定価: ¥ 651
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レビュー
宝石のようにきらめく空間を構成する粒子
『狼狽』、『転倒』と来て『逃亡』と冠した本書において亜愛一郎シリーズは完結を迎えます。日本版チェスタトンと形容するのが
相応しい世界観。大胆な逆説と一流のユーモアで装飾された楽しいミステリです。
本書の収録内容を紹介すると、まずは固定観念を粉砕してくれる「赤島砂上」。完璧な密閉状態内の人間を完璧に始末することができる
「球形の楽園」。合理的なシステムを非合理に皮肉った「歯痛の思い出」。人間の価値基準・価値判断なんてものは本当に
千差万別なんだと感じさせる「双頭の蛸」。まさに超一流のあべこべトリック「飯鉢山山腹」。
人間の心の綾を抉り、良くも悪くも強迫観念というものを描破してみせた「赤の讃歌」に「火事酒屋」。
そしてついに閉幕「亜愛一郎の逃亡」。愛一郎のまさかの素性に、彼が行くところに必ず現れる三角形の顔をした洋装の老婦人の正体も
明かされます。またそのほかにも粋な計らいが用意されています。本当によく練られた構成だと感心するばかり。ひとつひとつの粒子が
輝きながら繋がれ紡がれ織り成されてゆく。。
すべてのミステリファンにお薦め出来る極上の連作短編集ですね。たっぷり満喫してみて下さい。
《亜愛一郎》シリーズの第三作
名探偵名鑑が編まれた時に(五十音順で)最初に
くるようにと命名された本作の探偵役・亜愛一郎。
雲や虫、化石などを専門に撮影するカメラマンである亜愛一郎は、その眉目秀麗な
外見にそぐわないドジな振舞いを連発するとぼけた人物として造形されていますが、
誰よりも早く事件の存在に気づき、真相を見抜く観察力と推理力も備えた好漢です。
ミステリとしては、奇妙な謎や風変わりな状況が示された後、それについて天啓が
閃いた――「白目をむく」というアクションをする――亜が、謎解きを披露する ――
というのが基本パターンで、まず意外な真相が明かされてから、亜がそこに到るまで
の思考のプロセスが開示されるといった構成が採られています。
その際に展開される読者の意表を突くチェスタトンばりの逆説的ロジックは、
ときに非現実的なものになる恐れもありますが、それに説得力を付与すべく、
全編に亘ってさりげなく数多くの伏線が張り巡らされています。
読者は、亜の謎解きによって、あれもこれも伏線だった
のかと気づかされ、必ずや驚嘆させられることでしょう。
シリーズの掉尾を飾る本作では、亜の驚愕の出自だけでなく、彼の行く先に必ず現れる
不思議な人物――三角形の顔をした洋装の老婦人――の正体が遂に明らかになります。
※収録された短編の内容については「コメント」をご参照ください。
《亜愛一郎》シリーズの第三作
名探偵名鑑が編まれた時に(五十音順で)最初に
くるようにと命名された本作の探偵役・亜愛一郎。
雲や虫、化石などを専門に撮影するカメラマンである亜愛一郎は、その眉目秀麗な
外見にそぐわないドジな振舞いを連発するとぼけた人物として造形されていますが、
誰よりも早く事件の存在に気づき、真相を見抜く観察力と推理力も備えた好漢です。
ミステリとしては、奇妙な謎や風変わりな状況が示された後、それについて天啓が
閃いた――「白目をむく」というアクションをする――亜が、謎解きを披露する ――
というのが基本パターンで、まず意外な真相が明かされてから、亜がそこに到るまで
の思考のプロセスが開示されるといった構成が採られています。
その際に展開される読者の意表を突くチェスタトンばりの逆説的ロジックは、
ときに非現実的なものになる恐れもありますが、それに説得力を付与すべく、
全編に亘ってさりげなく数多くの伏線が張り巡らされています。
読者は、亜の謎解きによって、あれもこれも伏線だった
のかと気づかされ、必ずや驚嘆させられることでしょう。
シリーズの掉尾を飾る本作では、亜の驚愕の出自だけでなく、彼の行く先に必ず現れる
不思議な人物――三角形の顔をした洋装の老婦人――の正体が遂に明らかになります。
※収録された短編の内容については「コメント」をご参照ください。
あたたかく、幸福な大団円
◆第一話「赤島砂上」
裸体主義者クラブ(!)の集会が舞台。
トリックは、今では普通にことわざとして流通している
〈ブラウン神父〉シリーズの「アレ」が用いられます。
◆第二話「球形の楽園」
完璧な密室状態の丸いカプセルの中に、前頭部に打撲傷、
背中に突き傷を負った男の死体が…。
強迫観念に囚われた人間の視野の狭さには、
身につまされるものがあります。
◆第三話「歯痛の思い出」
病院での呼び出しである、
「亜さん、井伊さん、上岡菊けこ……?」
が、とにかく印象的。
◆第四話「双頭の蛸」
北海道の湖に現れたという双頭の蛸を取材するため
駆けつけた記者が遭遇した殺人事件。
一枚の写真を見るにしても、人は自分の
「見たいもの」しか見ない、ということでしょう。
◆第五話「飯鉢山山腹」
車体に書かれていた「ニウ島産(屋島ウニ)」の謎。
◆第六話「赤の讃歌」
赤を基調とした絵で名を成し、
画壇のドンにまで上りつめた画家の話。
終盤、すべてが裏返され、反転していく、
逆説の論理が展開されていきます。
◆第七話「火事酒屋」
火事が好きでたまらない酒屋の主人が遭遇した
不審火の現場から発見された他殺死体。
主人は放火と殺人、二つの容疑をかけられるのだが…。
集中の白眉。
背が低いために、消防士になれなかったという
酒屋の主人の人物像が、事件の構造と有機的に
結合しているのが、じつに秀逸。
◆第八話「亜愛一郎の逃亡」
雪中の離れから、亜はどのようにして
足跡を残さず、忽然と姿を消したのか?
亜の正体が明らかに。
祝祭的なラストの幸福感は格別です。
さよなら、亜愛一郎
◆第一話「赤島砂上」
裸体主義者クラブ(!)の集会が舞台。
トリックは、今では普通にことわざとして流通している
〈ブラウン神父〉シリーズの「アレ」が用いられます。
◆第二話「球形の楽園」
完璧な密室状態の丸いカプセルの中に、前頭部に打撲傷、
背中に突き傷を負った男の死体が…。
強迫観念に囚われた人間の視野の狭さには、
身につまされるものがあります。
◆第三話「歯痛の思い出」
病院での呼び出しである、
「亜さん、井伊さん、上岡菊けこ……?」
が、とにかく印象的。
◆第四話「双頭の蛸」
北海道の湖に現れたという双頭の蛸を取材するため
駆けつけた記者が遭遇した殺人事件。
一枚の写真を見るにしても、人は自分の
「見たいもの」しか見ない、ということでしょう。
◆第五話「飯鉢山山腹」
車体に書かれていた「ニウ島産(屋島ウニ)」の謎。
◆第六話「赤の讃歌」
赤を基調とした絵で名を成し、
画壇のドンにまで上りつめた画家の話。
終盤、すべてが裏返され、反転していく、
逆説の論理が展開されていきます。
◆第七話「火事酒屋」
火事が好きでたまらない酒屋の主人が遭遇した
不審火の現場から発見された他殺死体。
主人は放火と殺人、二つの容疑をかけられるのだが…。
集中の白眉。
背が低いために、消防士になれなかったという
酒屋の主人の人物像が、事件の構造と有機的に
結合しているのが、じつに秀逸。
◆第八話「亜愛一郎の逃亡」
雪中の離れから、亜はどのようにして
足跡を残さず、忽然と姿を消したのか?
亜の正体が明らかに。
祝祭的なラストの幸福感は格別です。
