- 書名: 11枚のとらんぷ (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
- 作者: 泡坂妻夫
- 出版社: 東京創元社
- 出版日: 1993-05
- 定価: ¥ 840
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レビュー
真相究明の手がかりは、十一編のショート・ショートの中に
素人奇術師の集まり〈マジキ クラブ〉によるマジックショーで、仕掛けの
中から出てくるはずの女性奇術師が姿を消し、なぜか彼女のマンション
の部屋で撲殺死体となって発見される。
死体の周囲には、クラブのメンバーの一人が自費出版した奇術小説集
『11枚のとらんぷ』で使われている小道具が、壊されて散乱していた。
しかも、彼女は自らの手でガス・ストーブの
元栓を回し、ガスを充満させていたという……。
カード奇術の種明かしを主題とした十一編のショート・ショート集を作中作
として組み込むという、当時としては画期的な構成が採られている本作。
殺人においても、それに基づく見立てが行われているのですが、容疑者が
小説を読んだ人間に限定されてしまうため、犯人の行動としては必然性が
乏しいと言わざるを得ません。
しかし、本作の作中作には容疑者を絞り込むクイーン流の消去法を行うための
データ(犯人のある属性にかんするもの)がさりげなく埋め込まれており、本編
と乖離することなく、有機的に連動しています。また、ある人物について、読者
に先入観を抱かせるように誤誘導しているのも巧妙です。
ロジックによって真犯人が特定された後に、事件の構図を反転させる
どんでん返しが用意されているのですが、そのためのアリバイトリック
の伏線が二重三重に張り巡らされていたことには感嘆させられました。
職人気質作者の丁寧な作りが光る。仕事に逃げがない素晴らしさ。
凝り性の本作家がまたまた、長編中に短編集を配し、長編の伏線を織り込むという新機軸を編み出した。と、言っても追従者は無し……。そりゃそうだわな、現代は一本の練りに練った作品を上梓するよりも、十作を垂れ流す方が金になる時代ですからね。職人気質で、真面目な泡坂妻夫氏ぐらいしかする人はいないでしょうねぇ。
作品の出来としては短編集の中に伏線が隠されているのは分かるのだが気付く人は少ないのでは?
相当易しめの犯人だが、その伏線部分を指摘されて、思わず額を叩いてしまった。これを読むと、なにも犯人当てだけが、推理小説の勝敗ではないことを思い知らされる。犯人を当てて敗北感を味わうのってそうは無いでしょ。
マジキ クラブ
魔術のようなオドロオドロしい雰囲気はなく、読んでいると「私も奇術をひとつおぼえたいな」
と思ってくるお話でした。
作中に挿入された短編集が非常に面白く、全ての奇術の種が最後に出てきて
「うーん、なるほど」
とうならせられるものばかりでした。
種やしかけのあるマジックがたくさん出てきて、それも楽しい推理小説でした。
さすが本職マジシャン
奇術師ならではの一風変わった作品です。メタミステリーの手法を取り入れながら、本格として見事に成立しているのですが、
やはり奇術師ならではのトリックのネタばらしが楽しい。
全体的にコミカルに仕上がっているので、肩肘張らずに楽しんで読めます。
読み終わってみれば伏線の宝庫。謎解きにチャレンジしたい方は、作中作「11枚
のとらんぷ」はようく読みましょう。
気持ち良く騙される快感
作者が奇術師としても有名なのは有名ですが、これは正に奇術の世界(アマチュアではありますが)を舞台にした作品。最大の読み所は、作中作である短編集『11枚のとらんぷ』。これが素晴らしい。この部分だけ抜き取っても一級のミステリ作品なのです。更にその内容が現実世界の事件解決に結び付いて行くという趣向なのですが、そんな事は取り敢えずどうでもよくなって、この短編集に没入してしまう事請け合い。そしてハッと気が付いた頃に本編の解決編がやって来ます。勿論本筋も秀逸ですよ、念の為。
