深沢七郎集〈第1巻〉

レビュー

希代の作家の初期作品群

創作の初期の段階は往々にして他の作家の影響が匂い、悪く言うなら鼻につくわけですが、この希代の作家は、そうではなく、後々の大きな作品へと花開く独自の萌芽をその初期作品から孕んでいます。

音楽的な要素、構成、登場人物らの価値観の揺れが生む筋の思わぬ展開、わかりやすい文章、心理描写に多くの紙面を割くことなくどんどん展開する物語り、しかし、それでいて嗚咽をもよおさせるほどの感情を引き起す語り口・・

寝転んで読んでいて、いつの間にか眠るどころか、肩ひじ付いて身を起こして読んでいる自分に驚かされます。

『楢山節考』『笛吹川』と言った代表作だけを読んで足れりとするには本当にモッタイナイ作家であると今感じております。