- 書名: 戦中派虫けら日記―滅失への青春 (ちくま文庫)
- 作者: 山田風太郎
- 出版社: 筑摩書房
- 出版日: 1998-06
- 定価: ¥ 1,260
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レビュー
虫けら
この日記を書いて30年後、作者は振り返って虫けら日記と名づけた。虫けらとは国語辞典で「1、昆虫を卑しめていう語。2、とるに足りない人間を卑しめていう語」とある。しかし、その日記は日々の出来事の記録に止まらず、作者の人間性に基づく省察である。当時、作者は20〜22歳であった。にもかかわらず、老子のような相貌を思わせる。この作者の天性と戦争という極限状況が相克して稀有な記録を産み出した。高貴な記録だと思う。
真の日記文学
昭和17年。医大合格を目指して上京、田町の沖電気の軍用通信機工場で働く苦学生=山田誠也。年表や歴史書からは決して表出せぬ、同時代人にしか語れない市井の雰囲気、戦争の実像を、20歳の文学青年の怜悧な筆が目撃、活写して行く。無線史研究上も必見。※原著は1973年刊。戦後編については著者没後順次公開中。
戦争中の日本人を知りたい人たちへ
本書は昭和17~19年の山田風太郎の日記です。本書を読むと新鮮な驚きを感じます。戦争中のイメージが変わること必至です。まず戦争中日本人全体が舞い上がっていて、ろくに物が言えない世の中だったわけじゃないと気付きます。本書を読んでいると当時の世相が透けて見えてきます。現在のアメリカのような雰囲気を私は感じました。私の想像を裏切って、はるかに自由な精神で人々は生きていたんだと実感しました。要するにごく普通に生きていたということです、紛れもなく同じ日本人なのだなと感じました。そしてそういうことを実感できるのは山田風太郎の洞察力です。何度ビックリしたか分かりません。戦争の真っ只中にあって、しかも20歳という年齢で、現在から見たかのような情勢判断にはビックリします。(情報統制があったのでそこは当然割り引きますが) 戦前特有の愛国心以外は共感もしくはおそれいること必至です。
当時の社会からは浮いた存在であった山田風太郎が客観的に社会を眺め、それを日記に記しているので、それを読む我々に当時の世相を教えてくれるのだと思います。戦争中の日本人を知りたい人におすすめの一冊です。

