深沢七郎の滅亡対談 (ちくま文庫)

レビュー

分け入っても分け入っても深沢

「月のアペニン山」の精神を病んだ元妻をドア影から無感動に見つめる男、
「楢山節考」で降る雪。深沢の作品にはなぜあんなにも透明感が/リアルさがあるのだろう。
深沢の小説で、しばしば「予想しえなかった」感動に出会うことがある。
「予想しえない」感動なんて日常でもそんなに沢山はないものだが。

「人間が多すぎるとろくなことはない。50人くらいでいい」

まったりとしながらも、新聞社説的な似非ヒューマニズムや、
中途半端な「文学」論争をなぎ倒す深沢の恐るべき「無私」。
対談中の何気ない言葉がそれをよく反映してたりする。
平等に注がれる深沢の反近代的な人間への愛情。
大江健三郎等も入っている。

野坂昭如との汚談、山下清との似たもの同士対談がお薦め。

少なく!ともこの対談集のどの一行にも退屈さはない。