パレード (幻冬舎文庫)

レビュー

先に映画を見てしまったので

映画を見てから、色々疑問があったので、この文庫本を買って読みました。
映画でラストを知っていたので、そうくるか、と思いながら読みましたが、
知らなくて、読んでたら、小説の方がインパクト強かっただろうな、と思いました。
映画は、割とわかる感じで複線を引いていたけど、小説はほんとにささいなヒントしか
与えてくれていないので、このラストは唐突に出てきて、ショックが大きい気がしました。
映画との違いで気になったことを1、2点。
未来の持っているビデオテープは、小説では、外国の普通のロードショー映画の編集だけど、
映画では日本のどちらかというと後ろ暗いビデオからの編集のようだったので、生々しさが
違う感じがしました。多分、版権の関係があるのだろうけど、せめて洋物の方が良かったです。
(最初、未来の少女の頃の出来事を録画したのかと勘ぐってしまったので…)。
小説では、このシェアしている部屋に共同の電話があるようで、時々、電話の伝言をしています。
でも、映画では、皆が携帯電話を持っているので、そのようなシーンはありません。
そういう意味で、私達は、この小説が書かれた2002年より、更に孤独な世界に来てしまった
のかもしれません。

静かな驚き。

 一度目を読み終えて、「ん?」と思ったので、ネットでネタバレやら他の人のレビューを読んだ後にもう一度読みました。読んだ後、なんとも言えない不思議な気持ちになりました。確かに怖いです。でもただ怖いだけじゃなく……。ちゃんと面白さも感じられました。でも、素人の言葉で説明するとどうしてもその「面白さ」が安っぽくなってしまう気がするのでここではやめておきます。
 
 「うわべだけの付き合い」
 何気ないこの本のテーマのようですが、その「うわべだけの付き合い」が最終章に大きくかかわってきます。みんな何かを抱えている。しかし、一緒に暮らしていながらもそれをルームメイトに話したりはしない。それでいい。それがいい。だからこそこの本のラストがあり、みんながそれなりに幸せでいれるのだと思いました。

 最初のほうは(最初から終盤までずっと)退屈で仕方ありません。それぞれの過去。どうでもいいような事件……など。特別「え!?」というような事件が起きるわけでもなく物語は進んでいきます。だけど、その「退屈」に意味があるんです。一見意味の無いようなことにちゃんと意味があるんです。
 そして「退屈」を乗り越えて最終章を読み終えたとき、「え!?!?」ではなく、「……え?」という静かな驚きを感じました。(僕の場合)
 その衝撃的なラストがなぜ起こったのか、それは全て最終章に行き着くまでの「退屈」のなかにこめられているのだと思いました。

 現在映画も公開されています。僕は映画は見ていませんが、登場人物とキャストが非常にぴったりだと思います。

現代に警鐘を鳴らしている

読破後、一気に色々なことを考えさせられ、
現代を生きる私に、ずしりと重い鉛を落としてゆきました。
でも、むしろ私はこの鉛を歓迎したくなりました。この本を読んでいなかったら、今の私達が置かれてる状況を考え、疑問に思うことさえなかったと思うから…。
私は今、学生ですが、同年代の人達にぜひ読んでほしい!

色々考えてしまうのはきっと、
私も、「パレード」しているからなのでしょう。

面白さ・・・どこ?

若い男女が共同生活をしていて、それなりに打ち解けて仲良くしているけど
それぞれが自分を演じて、決して本当の自分は見せない。
そんな住人のそれぞれの語りが、1章ずつ、ゆるゆると続きます。
私は、未来・サトルあたりで結構、退屈に感じてしまいました。

最終章の内容には、みなさん同様、驚かされましたが、「えっ、これだけ?」と
物足りなく思ってしまいました。
前振りが長く単調に感じたため、最終章が短くインパクトが弱いという印象を受けました。

解説にも書いてあった通り、もう一度読み直せば、1回目と印象が変わってくるのでしょうし、
2回3回と読んでこそ、この小説の良さを味わえるのだろうとは思うのですが、
読後感が悪く、退屈な前ふりが長かったことが影響し、もう一度読もうという気持ちになれずにいます。

例えば都心のオフィスビルで。

読み終える5分前にギョッとして、すぐに2周目にとりかかり、
他人の感想が気になってネット巡回し、最後に感想を書きたくなる。
そんな本。

読んでいて、都心の高層ビルにある自分の会社を思い出した。

表面上和気藹々と楽しく穏やかにやっているが、
自分の仕事に関わる部分以外、相手に興味なんてない。
隣の同僚が殺人兵器を設計してようが知ったことじゃないが、
人の書類を捨てたり、給湯室を汚すようなら、断固として抗議する。

会社が誰をひき潰してようが、知ったことじゃない。
それを笑って黙認できなければ、出て行くしかない。

自分の周りの環境に、とても良く似ている。
そういう意味で、怖い。

また小説内で5人の思惑は色々と絡むのだけれど、
女性の心理描写が非常に上手いことに驚いた。

特に、家庭環境ゆえに酒飲みのおこげになった未来。
現実に適応した、斜に構える酒飲みだが、実は誰よりも臆病。
今時の30近い女性に、結構いそうなタイプ。

彼女のビデオに上書きされた、踊るピンクパンサーのパレードは、
タイトルにもなっているとおり、この物語の象徴なのかもしれない。