人間臨終図巻〈3〉 (徳間文庫)

レビュー

風太郎流人間讃歌

最晩年と死の様態に特化しているとはいえ要は一種の人名事典なので、取り上げられている人物をよく知らないまま1ページ目から順に読んでいっても退屈するに決まっていますが、気になる人物の項目をちょいちょいと拾い読みしていけばやはりそれなりに面白いものです。自然は芸術を模倣すると言ったのはワイルドですが、見巧者がこんなふうに切り取るだけでたくまずとも文学を現出させることはできるのですね。しかも人の死にまつわるエピソードをこれだけ続けて見せつけられると、次第になにか粛然とさせられる思いがしてきます。ときとして満腔の憤怒を、皮肉を、侮蔑を、諧謔を込めながら、簡潔ゆえに抑制が効いて見える筆致もいいですね。通説中心で引用も少なくない点は、考えてみればウィキペディアのスタイルに似ていなくもありません。
第III巻の最後に五十音順の人名索引があって便利なので、やはり全巻まとめて買うのがよいでしょう。
それにしてもこの人はつくづく世間と人間が好きな人だと思いますね。劇団ひとりも言ってます。「否定を3回続けると肯定になるんですよ。(相手に、私のこと好き? と言わせておいて)
『好きじゃない、好きじゃないよ。…好きじゃない』」

とても失望

とても人気のある作家の高い評価を読んで全巻購入したのですが、かなりお粗末で、非常に落胆しました。項目数だけは多いのですが、ただのメモ書き、だから何だで、この作家のファン以外、少しでも歴史文化に造詣の有る方には本棚の娑婆塞げですので、ご注意。

これも買い

第三巻、老年期の人を扱うわけで、醍醐味に欠けるかと思ったが、よい意味で期待を裏切られた。
長く生きることの意味について考えさせられた。
東郷平八郎に関する視点は山田氏独自のものだろうと思うがハッとさせられた。

戦中派の歴史観

ある評論家が「司馬遼太郎より山田風太郎の歴史観を自分は買う」と言っていたが、それがあたっているかはともかく、これを読むとその気持ちはわかる、エピソードの筋は覚えても何度でも読めるのは、作者の文章の力とエピソードの背景にある作者の歴史観がしっかりしているからだと思う。大正生まれの戦中派らしく今はほとんど忘れられている、太平洋戦争当時の軍人、政治家をしっかり押さえている、戦後生まれには、新鮮で、戦犯といわれた、全くなじみのない人物が生き!生きと現れてきて、自分の心になにかを訴えかけて来たのには驚かされた、江利チエミ、夏目雅子など亡くなった時の事を知っている人物とジンギスカンやキリストが同列に論じられているので、色々な事が考えされて面白い、山田さんにはもっと生きて続編を書いてもらいたかった。

ハイ、それまでよ!

1巻から順に通読すると、有名人の臨終の姿も結核・自殺・拷問死・死刑といった派手なものから、次第にガン・脳溢血・老衰といった身近なものになっていく。900人もの死屍累々で頭が重くなった読後、自分の臨終のかたちを思わずにはいられないが、「なるたけおだやかに死にたいなあ」と放尿しながらつぶやく自分。あと、最期の言葉というものがクセもので、ドンデン返しみたいな一言は「ああ、無常」である。