最後の息子 (文春文庫)

レビュー

うーん、歯ごたえが・・

固定された生活が地道に積み上がる。大きな変革はない。
大きく日常から逸脱する気もない登場人物たち。
思わせぶりなコンポーネントが転がされる割には
中途半端にしか拾い上げられないので、すかっとした爽快感はない。

古い言い方をするならデカダンな中性小説。
ビネツ状態のような日常のタレ流しが、妙にこじゃれた、
小難しいレトリックと言い回しで遊ばれる感じ。

川上未映子や斎藤美奈子の文章が、きれっきれのシゲキに満ちた灼熱のステーキなら、
この小説はぐたぐた煮詰められた、味付けのないおじやでは・・
というのが、あたしの正直な感想。

これが原点だと言えるのでは??

著者の作品を色々読みながら、エッセンスの凝縮の仕方やキャラクター設定など他の作品よりも感度が高く、今尚この作品は秀逸だと思う。

はまってしまった

後輩に勧められて最初に読んだ吉田修一の本です。 これではまって吉田さんの本は10冊くらい読みました。
いろんな話題 登場人物 ストーリーがあるけど おかまちゃん 少年時代のホモセクシャルは彼の共通する
テーマですね。でもほんと知らず知らずに引き込まれる文章はとても魅力あります。

飾らない新鮮さが魅力

新人らしい実に新鮮さが伝わる作品。
「最後の息子」はおかまと同棲する青年の日常を「ビデオ」で振り返る回顧録。これまでにない構成でちょっと驚いた。
あまり馴染みのないおかまの心情や苦悩。そのおかまに食べさせてもらっている青年の気遣い。青年のまっすぐな気持ちとおかまの掛け合いは、妙に心地よく時に心理を付いてどきっとする。結末が少し寂しかったけど、この物語を終わらすとすればこんな終わり方でいいのかなと納得した。
「破片」は九州の父親と3人の男兄弟の生活を、何の飾りも付けずに見事に描いている。男達のぶつかり合う汗、少しの涙。なつかしい、まさに昭和の風を感じさせてくれる。
「Water」は高校の水泳部員の青春物語。個人的には一番良かった。題材的にはありきたりかもしれないが、高校生の生活にはあまり馴染みのないタブー視されてきた大人の問題を織り込ませながら単純な青春ものにしていない。それにも係わらず読み終えた後の爽快感は感嘆。
3編それぞれに個性があり、短くはあるものの今後の活躍が期待される1冊と言える。

個人的にキュート

表題作「最後の息子」について

新宿でオカマの閻魔ちゃんと暮す若い男(主人公)のモラトリアムな日々。
物語は主人公が撮りためたビデオの映像を軸に進む。
映像に残された怠惰な暮らしの中には…。

現実にオカマと同棲経験のある人は多くないと思うけれど
一見、非日常的で同調しようもないと思えるこの話、
読み終えてみると思いの外に普遍的。
結局そこにあるのは、愛したい、愛されたいという人間の本質的な部分そのもので
そこに薄っすらとつきまとう物悲しさ、
またその物悲しさを皮肉に笑うことしか出来ない無力感、
それらは何ら特別なものではないからだ。
「何もしない時間を貢いでもらっている」主人公の
それ故の不自由さ、閉塞感のようなものが
部屋で過去のビデオを延々見直すという行為によって効果的に表現される。

最終場面で主人公が日記を開いてやったこと。
全てを一から受け入れようとしているようで清々しい。
必ずしも万人がキュートだと感じるかは疑問だけど
個人的にはお奨めの1冊。