愛する源氏物語 (文春文庫 (た31-7))

レビュー

短歌の効用

 著者による源氏物語のエッセー・短歌の現代語訳・短歌の説明と、一冊で三度美味しい本。
 源氏物語の現代語訳などを読んでいるときに、読み飛ばしがちな短歌ではあるけれど、『氷砂糖をなめるように味わった』ならば、より味わい深く源氏物語が読めることを教えてくれる。
 物語の中での短歌は、洗練された人間関係のツールである。その中で、本音の感情やかなり立ち入った話なども、下世話にならず、花鳥風月になぞらえて、やんわり伝えてみたり、ときには激情を伝えてみせる。
 機知や教養、筆跡や紙の選択などに現れるセンスなど、チェックポイントがたくさんあるだけに、登場人物を語るのに欠かせないツールでもある。短歌に表現された登場人物たちの心情を深く読み込むことができるだけでなく、千年も昔の日本に、こんなに洗練された言葉の文化があったことが実感できる。

俵さんらしい

歌人・俵万智らしく、源氏物語の和歌を取り上げて光を当ててみせる。「万智訳」和歌が、無理なく溶け込んでいるとは言い切れない部分もあるけれど、わかりやすかったのは確か。
現代で源氏を語る人は、大御所女流作家、はっきり言ってもうオバアさんばかりなのに対し、あっけらかんと感想を述べ、さくさく進んで時には古文の文法解説までしてくれる本書はとても親しみが持てる(そういえば俵さんは高校の古文教師でもあったのだ)。
これを読みながらもし氷室冴子が源氏を語る本でも書いてくれたら、最高なのになと思えて仕方がなかった。

古典嫌いのアナタに

万智ちゃんせんせーによる、作中和歌の鑑賞。和歌は例によって万智流現代短歌との対訳。おおむね物語の筋に従って進行するので、源氏物語解説本としても。


古典の時間に、大量の背景知識を織り込んだ文章を《現代語訳》と称して覚えさせられて、古典嫌い・和歌嫌いになったアナタに。