- 書名: 家族 (文春文庫)
- 作者: 南木佳士
- 出版社: 文藝春秋
- 出版日: 2003-08
- 定価: ¥ 530
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レビュー
それぞれの・・・・・
信州の医師でもある作者の「私小説」とも言える体験からこのお話は出来ている。
それぞれの立場で書かれたものが実にいい。
家族を介護を「死」を考えさせられる。
生かされる自分
南木佳士さんは多くの肺がん患者さん等の死を見てご自身がパニック症候群や鬱になってしまった。その病の長い道のりが終わりかけた頃の作品なのだろうか。
タイトルでもある「家族」は、虚構の中の自叙伝もあるように感じる。
自身の生い立ちは既に多くの著作の中で書かれているが、本作品ではまさに家族を証言者として登場させてある種自虐的にも見える作品となっている。
逆にその自虐性が南木佳士という医師である前に男である弱さと優しさを存分に表出させている。単なる想像ではあるが、病み上がりのまだトゲトゲとして心象表現なのかとも思う。
信州という場所で佐久という自然と人々に生かされ生き抜く男と家族、そして多くの患者さん達。
ありふれた日常と風景がなぜか心を揺さぶるのである。
家族の複雑な心情描写が見事
短編集の1つ目の「家族」は完全な小説と思って読んでいたが、後で作者自身の体験に基づく自叙伝と分かり非常に驚いた。医師である作者の父を介護する家族の心情が描かれているのだが、作者自身の他に作者の姉、義母、父のそれぞれが語り手となっている。家族の中で起こる様々な出来事に対して、介護する側とされる側、親と子、夫と妻、それぞれの立場で言い分が全く異なっており、複雑に絡み合った家族の心が良く描かれている。
自分自身のこと、自分の家族のことをこれほどまでに赤裸々に、しかも客観的に表現できる作家に出会ったのは初めてである。
