- 書名: ダイヤモンドダスト (文春文庫)
- 作者: 南木佳士
- 出版社: 文藝春秋
- 出版日: 1992-02
- 定価: ¥ 490
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レビュー
まさに題名どおり
「死」とは何か?医師でもある著者は、リアルに問いかけてくる。たんたんとした文章の中に、著者の強烈な感情が埋め込まれた文学作品。私は学生時代、教科書で著者を知りました。美化して描かれがちな「死」を正面から捉えた、容赦のない作品。
美しい文体
私の友人に弁護士がいますが、彼女は弁護士を辞めて今、普通の会社で経理業務を行っています。私も含めて多くの人は彼女に対して「もったいない。なんで弁護士を続けないの?」と聞きますが、彼女の答えは「私には向いていない」というものでした。その理由は、弁護士は依頼人の話を聞き、弁護することを使命とされますが、裁判等で検察側の尋問を受けた時、明らかに検察が言っていることが正しいと思うことが良くあるのだそうです。それでも仕事と割り切って被告人を弁護するべきなのか?を常に悩むようです。本書を読んで、医師とは弁護士以上に心労の多い職業ではないか?と再確認しました。
人間にとって一番悲しいことは死です。それは死んでいく本人よりも残された人の方が強く感じるものです。その死を毎日のように直面する医師という職業はある意味人間としての感情を放棄した生き物なのかもしれないと思いました。そんな医師という職業につき、それについて多少矛盾を感じている著者だからこそ書ける小説だと思いました。文体も非常に美しく内容の濃さの割には読みやすかったです。
病前、病後
ダイヤモンドダストを読みたくて購入しました。私は心身を病んでからの作品を先に読んでいたので、同じ筆者でも世の中を見る目が変わるものなのだなと感じました。
人生いいことばかりじゃないけれど
東南アジア難民医療団に参加した経験をめぐっての複雑な思いが、信州の冷厳な風土と響きあって描かれている。今回また文庫で読み直したが、まさしく文学の王道を行くように思える作品だ。表題作の悲しさが特に好きだ。人生のあっけなさがよくわかる。たまには舞い上がるように幸せなこともある。でもやっぱりときどき、本当にガッカリだよ、なんて目にあう。そして、それでも私たちは生きていく。やっぱりな、なんて思いながら生きていく。死んでいく人たちは、死んでいく。
淡々とつましく生きていく人たちを、そして死んでいく人たちを確かな筆致で描いた作品。第100回芥川賞受賞作である。
