夜と女と毛沢東 (文春文庫)

レビュー

深まらない対話

 書名のなかの「毛沢東」に興味があり、手にとりました。当該部分は、『毛沢東の私生活』を参考資料として対話されています。もしも、毛沢東に興味があるのであれば、この『私生活』を紐解かれることを推奨します。たくさんの発見があるでしょう。
 他の部分は、あえて読む内容を備えていると思いませんでした。相撲になっていない、と言って良いと思います。

消費資本主義にどう対抗するか

麻原の死刑判決が確定しそうなので読み直してみた。毛沢東が薬漬けだったこと、戦争中は本当は健康だったこと、中国は2020年頃に内戦に陥ること、オウムは初めて「敵を措体しない」人殺しを行ったこと、夜の寛大な精神を失った健康な社会が疲弊していること、などが語られる。身体を無視した消費資本主義社会のなかで、対抗軸として山谷やアフリカに希望を見出そうとする。

しかし、どのテーマにしても思いつきというか、一貫性が見出せず、話題も閉塞しているように思う。思想が何の役に立つのか、しきりに考え込んでしまった。テーマのひとつ、女については、ほとんど猥談。興味深い指摘も多いのだが・・・。

ただ、消費資本主義の中で、消費者がボイコットを駆使することによって革命を起こすことのできるという吉本氏の指摘は有効ではないだろうか。

体験と理論と

 現代社会に対する違和感から始まって、実際に体験することと理論的に推測することの違いについて両者においてやや対立的に語られる。この対立は吉本の他の対談やインタビューにおいても変奏されて繰り返され、あたかもこの矛盾は読者個々人が生きることによって答えを与えなければならないかのように語られ続けているといえるだろう。