新選組紀行 文春新書 (文春新書)

レビュー

碧血碑

 小石川伝通院から、
 京都の新選組屯所となった壬生
 会津、そして函館、宮古など、
 新選組の活躍、移動した土地を訪問し、当時起こったことと、
その地の現在の様子を書いた本です。
 
「義に殉じた士の血潮は三年経つと碧くなる、という中国の古伝承にもとづいて命名された蝦夷共和国軍戦没者慰霊碑」 
函館の碧血碑について
「旧弊な二元論を超克しているところに美点があった」
とあるのが印象的でした。

 作者が旅を楽しんでいる様子が描かれていて、これから出かけたくなってくる楽しい文でした。

よい本

新撰組の本を読んだ中でも、非常に簡潔且つ分かりやすい文体で書いてることに加え、その場所がかつてはどのような場所であったかを思い起こすことができる哀愁あふれる一冊。既に昔の風景はどこも消えてしまっているとはいえ、地形や雰囲気から、近藤や土方がかつてはこうだっだだろうこの道を歩いていたのかと想いを馳せつつ、とはいえ、残ってるのは墓ばかり。結局今でも残っているのは墓だけか。なんてはか(墓)ないのお。

若者たちの素顔も垣間見えます

 登場する地名の大半は当然ながら京都です。
 江戸時代末期は、特に京都ではテロが横行し、江戸幕府がより警察国家の色彩を強めていた時代。新選組が活躍した土地、と言えば聞こえはいいですが、血で血を洗った現場を歴史小説家が巡る紀行とでも言いましょうか。

 新選組は武装警察部隊に過ぎませんが、今でも随分と人気があるようです。日本人の心を打つ優雅さではほかの土地の追随を許さない地位を占める現在の京都と、かつては日本政治の重要拠点として陰謀が渦巻き、混乱を極めた戦場の印象との差にある存在なのかもしれません。

 新選組の具体的な足取りをたどることで、中村氏は単なるヒーローではない彼らの人間臭い素顔も披露します。新選組ファンがドキドキしながら読むもよし、小説家の鋭い洞察力の行方を追うもよし、ぐんぐん読める一冊です。