阿弥陀堂だより

レビュー

いい映画といい原作小説

いい作品です。人の世の美しいものがいっぱい詰まっています。
映画もいい作品でした。小説とはかなり違うけれど、どちらもいいです。
やさしい作品です。

人の心の奥を見つめる優しい目

私と「阿弥陀堂だより」との出会いについて。

たまたま、本屋で文庫本コーナーをパトロールしていたとき(特に目当ての本がなくても週に一度は必ず本屋を巡回している)、
文春文庫の前で何か視線のようなものを感じ、そちらを向いてこの本と「目」が合った。
まさに目が合ったという感じだった。(偶然にも映画公開直前!)

手に取っておもしろそうだったので購入し、一気に読んだ。夢中になって読んだ。
良かった。何度も涙を流した。
人の生死について、厳しく、しかし優しい目で真っ直ぐに見つめる作品であった。

以後、南木佳士の作品(小説・エッセイ)にのめりこみ、購入できる著作を全て入手していった。
それと同時に、いまさらながら純文学に目を向けることとなった。

素朴感がすばらしい

本書を読み終えた後、本書が映画化されていることを知りました。本書の独特な時間軸や空間軸は文章によってのみ伝えられるもので映像化することは非常に難しいのではないかと勝手ながら想像してしまいました。
私は本書を読んで主人公の孝夫と美智子は著者である南木さん自身であると感じました。医師としての緊張感と作家としてのプレッシャーを一身に浴びている南木さんを分解したら孝夫と美智子に分かれたのではないでしょうか?極度の緊張と弛緩を繰り返す医師という職業を持つ著者だからこそ描くことの出来る時間軸と空間軸を是非とも多くの人に堪能していただきたいです。

魅力的な女性達

 この小説には、重要な登場人物として3人の女性が出てきます。3人ともとても魅力的な女性達です。特に、阿弥陀堂を守っている「おうめ婆さん」が一番魅力的です。「おうめ婆さん」の語る言葉やしぐさにとても心安らぐのです。年をとって、この様になれたらいいなと思います。
 久しぶりに穏やかな気持ちで読める、いい小説に出会えたと思います。

生きていくということは、、

今、病気をしていたり、心に何かの不安がある人なら、何かきっと感ずるものがあるとおもいます。この本の中に、下記のセリフがあります。

「病気っていえばねえ、私は自分が病んでみるまで、医者の癖に病気と単なる体の故障の区別がつかなかったのよね、ガンで死期が迫っていても病気で無い人もいれば、一寸長引いた風邪でおもい病気になってしまう人もいるのよね。問題は心を病んでいるかどうかなのよ。重篤な疾患にかかっていても、心を病んでいない人は病人ではないのよ」

病は気からという昔からの教えがよく理解できました。人生は春夏秋冬のサイクルを通っていく、その中に人としての自然な生き方が在る。誤解を恐れずに書くと、生者・死者は表裏一体ということがわかれば、「病気」にはならないともいえるのだということが一貫して流れているような気がしました。今の日本で忘れ去られてしまったものがこの本の中にはあるような気がします。生きるということをとても美しい文体のなかで味わわせていただきました。

なお、映画化され、DVDはレンタルもされています。本もいいですが風景の想像力は映画のほうがよいかもしれません。

でも心理描写などを見ると本と映画はやはり別物です。もちろん映画もすばらしいですよ。どちらも味わってみてください。