- 書名: 黒船以前―パックス・トクガワーナの時代 (中公文庫 な 46-10)
- 作者: 中村彰彦
- 出版社: 中央公論新社
- 出版日: 2008-09
- 定価: ¥ 880
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レビュー
豊かでダイナミックな江戸談義
江戸時代を舞台とした小説を多くものしている中村彰彦氏とイスラーム・国際関係研究の山内昌之氏の対談。「歴史」を生業にしながらも、大きく分野の違う二人が江戸について語ると、多くの豊かな知見が飛び出した。本書はそんな楽しく実り豊かな歴史観が立体的に浮かび上がる。
グローバル大航海時代の荒波に抗した徳川政権、鎖国というよりもむしろ「開国」である、保科正之や徳川綱吉の評価、三大改革、近づく維新幕末へのカウントダウン・・・江戸時代に対する研究というのは薩摩出身の重野安繹によって大きくゆがめられたものであるという。
薩長中心のゆがんだ歴史観に対する異議申し立てはあちこちで続けられているが、本書も肩ひじ張らずに生き生きとした、楽しい江戸時代の様相を愉しむことができる読みやすい一冊である。
対談集としては面白いが、新しい江戸時代像は提示してくれない
江戸時代を代表する権力者たちを博識な二人が語り合うという点で、楽しく読める本である。さまざまなエピソードが語られ、権力者たちの人物像を眺めながら気楽に読み進めることができた。
ただ、江戸時代を見直すという面で評価するとなると、視野がミクロに過ぎ、政策の内容をあまりに権力者個人の人格に追わせすぎる点、論法が古臭く残念である。また語られている江戸時代像や人物像も旧来の定説を踏襲した感じであり、「はじめに」で表明された「定説をならべて満足しない」などの目標が達成されているとは思えない。
田沼時代の評価はどうなのか?
面白さに一気読み。親本はコイズミ時代の「構造改革」などというキャッチフレーズが飛び交っていた時のものである。
中村彰彦の保科正之びいきが理由のないものではないことがわかる。松平信綱以上に高い評価を与えている。
1点、歴史学者のあいだではどういうことになっているのか知らないが、田沼意次に対する評価は、著者2人のなかでマイナスの印象が強い。山本周五郎の『栄花物語』を愛読する評者は意次にシンパシーを持っているのだが。学界では評価は定まっているのだろうか?
