- 書名: あかんべえ〈上〉 (新潮文庫)
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社: 新潮社
- 出版日: 2006-12
- 定価: ¥ 540
- この本の詳しい情報(Amazon)はこちら
レビュー
すっかり惹きこまれます
おりんと亡者の交流になんだかほっとします。
亡者の存在が違和感なく受け入れられるのが不思議です。
小さい頃、幽霊の存在について考えたことのある人は、
はまるのではないでしょうか。
亡者の倫理
著者の新刊の『おそろし』を読み、しんみり感動して、つい、こっちも再読。
もうたぶん4回目くらい。単行本が出版されたときに購入してるけど、せっかくなので上下巻の文庫
で購入し直し。こんなことばっかしてっから金が貯まらないのね、と思いつつ。
出版されて久しいので、内容の概略は割愛中。
「おまえは俺を斬った。しかし、それは正しいことだった」
何度読んでも、この一言に圧倒されます。
正しいことを根拠付けるにあたって目下非常に有力なものが2つあると考えています。
ひとつは進化史的に適応の過程で人間が獲得してきた感受性や情緒性における傾向性から社
会的振る舞いの正しさを演繹しようとする進化生物学的研究。もうひとつは、経済学に代表され
る、個々人の振る舞いの大規模な集積を、個々人とは別水準で数理的な検証の俎上に上って
くるような傾向性として把握し、そこから社会状態の適正化を演繹しようとする、一部の制度設計
的な経験的社会科学的研究(大雑把ですいません)。
ひとつめの進化生物学的研究の蓄積からは、どうしたって“生存に有利”という結論を超える「正し
さ」は導けないと思うので、自分が殺されることを正しいと思える理路は、そこにはないように思えま
す。ふたつめの社会科学的な研究からは、もはや個人的な納得感とか情緒的満足感とは別の話
になってしまうので、理性的に「正しい」とは言えても、実存的に納得して「正しい」とは、もう言えな
いように思います。
そうしてみれば、この「おまえは俺を斬った。しかし、それは正しいことだった」という一言が、いかに重
大な領野を切り開くか、って話しですよ。進化生物学的研究や経験的社会科学的研究に押さ
れて、いまいち肩身の狭い日々が続く、規範的倫理学の出る幕だって、まだまだありそうな今日こ
の頃でございます。
宮部みゆきお得意の歴史小説サスペンス
「ふね屋」という料理屋の一人娘のおりん。
病床に臥した彼女が夢うつつの中で目にしたのは
あかんべえをする女の子。
その女の子を見えるのはどうやらおりんだけ。
そう、その子は亡者、幽霊なのだから。
ふね屋に住み着いた5体の亡者が、成仏できない
その理由は何なのか。他の人には見えない亡者が
おりんに見える理由は何なのか。
宮部みゆきお得意の歴史小説サスペンス。
そうだった、新潮文庫の「発表!今、読みたい新潮文庫」
フェアで好きな作家アンケート1位の帯がついて、
平積みになっていたから買ってきたんだった。
そのアンケートの結果にも納得の出来るものでした。
北京旅行で最後まで読み終えることが出来なかったんですが、
平日もかばんの中に入れて、空き時間に読んだりしたくらい、
続きが気になりましたね。
亡者が出てきてありえない設定ではあるものの、
読み進めて謎を解いていくうちに、
胸を打つような気持ちにさせられました。
江戸時代という設定ではあるものの、
亡者になるような人間の暗部というのは今もまた同じ。
歴史小説という体裁を使いながらも、現代社会に
メッセージを送り込む、宮部みゆきワールドここに
ありといった感じの一作でした。
登場人物が生き生きしています。
読んでいて、すべての登場人物の出で立ちや表情、しぐさが頭の中で鮮明に浮かび上がりました。時代ものの小説は知識不足の私としては分かりづらいものが多いのですが、宮部さんの時代ものは文章がすんなり頭に入ってきますし、楽しんで読めますのでおすすめです。
面白かったなぁ。
今年は本をあまり読まなかったですわ。特に小説はなかなか機会が無くてねぇ。評論やら随筆やらが多くて味気ない生活でもありましたけれど。そんなとき妻が読んでいたので、ひょいと手にとって読み出したら止まらないの。「上」「下」二日間で読み終わりました。宮部みゆきは初めて読みましたが、皆さんのレビューを読むと時代物のほうが評判が宜しいようなので、少し読み続けようと思ってます。
この作品、誰かも書いていましたが「ふね屋」の商売については言及されていないのが「不満」というか「不安」です。あんなお化け騒ぎが起きているのに、よく生活していけてるなぁという疑問と、これからどうやって繁盛させていくんだぃ?って思いがね。へぇ、あっしにはてんで考えつきやせんもので・・・。
