模倣犯〈5〉 (新潮文庫)

レビュー

大作

昔立ち読みした本。良く読んだな、この厚みを立ちっぱなしで。
「楽園」を読むにあたり、ちゃんと読み直そうと思って文庫本で再読。
大作だった。

宮部みゆきの人物描写が好き。
心情表現など本当に細やかで、いろんな登場人物の悲喜交々が伝わってくる。
でも、終盤犯人のスケールがどんどんちっさくなっていったのは微妙に感じた。
「不幸なめぐり合わせ」と取るか「たまたまうまくいった」と取るかで
この事件に感じる恐怖や被害者、犯人それぞれへの印象が随分変わってしまう。
狙って犯人像をスケールダウンさせていっているとは思うんだけど、
それと「たまたまうまくいった」要素が相まり、
読んでいて被害者へのやりきれない気持ちが強くなり過ぎてしまった。

結果として、読後感は悪かった。
悪いだけで終わらせないのが、この作家さんの凄さでもあるのだけれど。
最後の彼の慟哭が、今思い出しても切ない。

これだけの長編を見事纏め上げたのは素晴らしい。
ただ若干中だるみもあったため★はマイナス1で。

そりゃ、ベストセラーにもなるわ

ベストセラーになり
図書館では常に順番待ち。

評判は良くなかったが映画化もされ、
ずっと読みたい読みたいと思いながら、
ようやく読むことができました。

文庫版は5巻の長編ですが、
次の展開が気になりグイグイと
力強く引きつけられ1週間で読みきってしまいました。

もう脱帽です。
大拍手を贈ります!!

この本、読んで良かった。後世に残る傑作です。

二千ページを超える大作の完結巻です。
あまりの面白さに、寝ずに読んでしまいました。
読み終えた後は全身の力を抜かれました。魂を抜かれたかのよう。この本は、凄いです。

読者には明らかにされている事実を徐々に登場人物達に浸透させていく手法も見事ですし、それぞれが知恵を絞って犯人の嘘を見破っていくあたりは本当に興奮されられました。
終わりのほう、老人と犯人の対峙の場面は、泣きました。ラストも泣きました。

犯罪に対する世間のあり方や筆者の思想もきちんと描かれており、人間関係には血が通い、仕掛けやミスリードも存分に味わえます。エンターテイメントとしてもミステリーとしてもこれだけの完成度を誇るおはなしはそうあるものではありません。

世の売文業の皆様、くだらない小説を出す暇があったらこの本を読んで少しは勉強して欲しいものです。今更ですが作者の力量は本当に恐ろしいです。宮部みゆき氏を超える女性作家は、しばらく現れないのではないかと思います。

また五冊それぞれの表紙がとても良いですね。この物語を実に巧く表現しています。

社会悪が引き起こす惨劇

非常に長かったが、最後まで飽きずに楽しめた。
第一に、やっぱり上手い。ひとつの事柄を色々な登場人物の側面から違った角度で丁寧に描き切る、そのテクニックは秀逸。
最初は淡々とした群像小説なのかな、という印象を受けるが、それぞれのストーリーが徐々に交わり、そして重なり、
ひとつに終結してゆくラストはとにかく圧巻の一言。
そんなにうまく事が運ぶのか?と思わないでもないが、しかしそのマイナスを差し引いても有り余るお釣りがくる力作。

犯罪者の心理、被害者遺族の心理、取材する者、警察、その他第三者の心理、
決して相容れることのない互いの主張とその苦しみ、心情をこれほどまでリアルに臆することなく突き詰めた作品は初めて読んだ。
それぞれの傷を抱えながら、そして更に傷つけ合いながらも、正しい道を模索してゆこうと必死でもがく登場人物たちの姿に心をえぐられる。

犯罪そのものの惨劇、犯罪者心理の生々しい描写、それらは当然理解なんて域を超えているし、向かっ腹が立つ。
しかし、実際に犯罪はこうやって起きるんだ・・・と、その点は否応なしに納得してしまうほど丁重に描かれていて、
この人はやっぱり社会派ミステリーの秀逸な書き手であり語り手なんだな、と思わずにはいられなかった。
十分なエンターテイメント性で楽しませてくれながらも、心に深いものを訴えてくる素晴らしい作品だと思う。

全部を読んで

やはり長いですが、もし長くても長いだけの必要性があるなら良いと思うのです。
ですが中盤で、もう既に亡くなった人の話を延々と読まされても、結局その人は
何も出来ずに亡くなっているのです。
そんなに詳しくこの部分を書く必要があるんでしょうか?
読者はやり切れないモヤモヤを抱え込まされて、先に進むしかありません。
その後にも更にボロボロになって死んで行く人もいますが、作者は全く救いの手を
差し伸べません。
さすがにここまではしないだろうと思いましたが、その人の死なんて、作品には
大した部分ではなかったのでしょうね。
ですが、作品中その親族達の事を考えると、大変気が重くなります。
フィクションですが、そういう事まで考える読者もいるのです。
ノンフィクションだとしたら仕方がないと思いますが、フィクションであるこの
作品で、ここまで人を殺して作者が伝えたかった事がさっぱり分かりません。
現実は厳しい?誰も他人は助けてくれない?人殺しは日常茶飯事だ?
はっきり言って、宮部みゆきはこれ以降読む気が起こらなくなった作品です。