東京湾景 (新潮文庫)

レビュー

最高の恋愛をあなたに

吉田修一の最高であって最高級の恋愛小説。物語を読んでいくとわかるのですが、なにかしらドラマ「たったひとつの恋」を思い出します。人と人との繋がりを理屈なくして感じられる恋愛とでも言うんでしょうか。亮介と美緒のなにげないんだがそのなにげなさにドラマがあるというか...波乱とか驚愕とかドンデン返しとか今はやりの感じはないんですが、あったか〜い気持ちになれる物語テイストでした。

都会で働く若者への「優しいまなざし」がいい!

「品川埠頭」で肉体労働をする亮介。高校時代の先生との純愛が失敗したことが心の傷となり、彼女をもつことができても本当の意味で愛することはできない。「お台場」のオフィスに勤務する美緒は、ごく普通の家庭に育ち、男にひどい目に遭わされたような過去もないのに、人を愛するということが作りものぽい嘘に見えてしまう。「東京湾景」は、そんな男女が本当の愛を発見するまでの物語。

吉田修一の作品には、いつも、エドワード・ホッパーの絵画のように都会の若者の孤独が絶妙に描かれている。お台場、品川埠頭、天王洲アイルなどの東京湾景がリアルにまぶたに浮かんでくる。都会の孤独のなかで温もりをもとめる男女。でも、一人一人の存在はどこまでも孤立していて一体感はない。そこに作者の「優しいまなざし」がある。

いつの間にか「吉田修一ワールド」のファンになっていた。

まるで女性が書いたような恋愛小説のよう

「悪人」に感動して次にこの本を読みました。恋愛小説は男性作家より女性作家の方がはるかにうまいと思いますが、吉田氏のこの作品はまるで女性が書いたかと錯覚するほど微妙な心の揺らぎが書けています。しかも登場人物は男性よりも女性の方がよく描かれていると思います。女性の読者がこの意見に賛同するかどうかは分かりませんが。宮本輝氏も女性に人気がありますが、女性の方はどちらの作家がお好みでしょう。「悪人」を読んだ時も感じましたが、この作家が人を観察する力は相当なものです。

まるで女性が書いた恋愛小説のような

「悪人」に感動して次にこの本を読みました。恋愛小説は男性作家より女性作家の方がはるかにうまいと思いますが、吉田さんのこの作品はまるで女性が書いたかと錯覚するほど微妙な心の揺らぎが書けています。しかも登場人物は男性よりも女性の方がよく描かれていると思います。女性の読者がこの意見に賛同するかどうかは分かりませんが。「悪人」を読んだ時も感じましたが、この作家が人を観察する力は相当なものです。

本作は良い

気になっている作者であるので今までのレビューでは辛口になっていましたが、本作は良いです。初めは「出会い系?」と不安の出だしであったが、一章から良質な物語が紡ぎ出されております。ここまで恋愛に対して、体と気持ちの対立や同調を描いた作品は余り無いと思います。その問題はいつまでも僕たちを悩ませる問題でもあります。なぜならこの問題にはゴールがあるのか、無いのかすら解りません。当然ゴールを見ることもできません。
本作の主人公達は見つけたのでしょうか。私は見つけていないのだと思います。彼や彼女は体と気持ちの問題に気付き、両者で理解し、初めてゴールを目指そうとしているのです。
読者である私は心から素直に彼らの行く末が幸せであることを祈っております。それぐらい良質な恋愛物語であると思います。一読の価値があります。