- 書名: 橋のない川〈1〉 (新潮文庫)
- 作者: 住井すゑ
- 出版社: 新潮社
- 出版日: 2002-06
- 定価: ¥ 860
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レビュー
今でも読み継がれているのは、さすがに名著
かなり以前(中学生の頃)に読んでおり、強烈な印象を持った小説であるとともに、長編にも関わらず飽きさせず、文章も優れていると思います。
2009年になっても、レビューがあるくらいですので、やはり名著なのでしょう。住井すゑさんの力作。
部落の差別問題と、子どもの真実を見抜く目
明治維新が終わり、日露戦争が終わっても、江戸時代、エタとして扱われた家々、部落は
いまだに不当な差別を受けていた。それは、そんなエタの家族の物語。
かつての日本で、アメリカや南アフリカの人種差別に匹敵するほどの
差別が公然と行われていたとは、と、その事実に衝撃を受ける。
と同時に、不当な差別と苦しい暮らしにもかかわらず、笑いを忘れず、支えあって
生きる部落の結束力と家族の力を、眩しく感じた。
この第一巻では、まだ幼い少年孝二の、真実を射抜く鋭い考察力に目を見張る。
うそやでまかせにおどらされている大人たちをしり目に、自分の力で
物事を考え真実を追求していく様は、古代ギリシャの哲学者そのものではと
思わざるを得ない。
部落差別というぞっとする過去を(もしかして今もあるのだろうか?)描くとともに、
家族の暖かさやこどものたくましさをも丁寧に描いている傑作。
文学を超越したテクスト
私が現在までに読ませていただいた文学作品中、最も感動し涙した作品です。
本書は部落で成長する少年を主人公にして、その葛藤と苦悩、それと闘い、向き合い、そして大きく成長していく様を様々なエピソードを織り交ぜて描いたすばらしい作品です。作品内容の時代から歴史作品のようでもありますが、問題の根幹は依然変わらず、現在の部落問題に通じています。そうした意味で部落差別という大きな問題を歴史的問題として片付けてしまわないためのアイテムとして純粋な文学を超越した役割を担っている重要なテキストといえます。
私自身、両親が京都という現在もなお部落問題が活発な地域の出身であったため、部落というものに対して若干の問題意識はあったのですが、育ったのが部落問題のない地域であったため、直面する問題として部落問題を教育されたことがありませんでした。そのため問題意識も表層からの問題意識に過ぎませんでした。高校生の時分に本書との出会いがあり、それ以降より深く正しく思考できるようになったと思っています。部落問題の歴史から現状への橋渡しとして、これからの時代を担う若者に是非読んでいただきたい良書です。
7冊あるので手を出しにくいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ぐいぐい世界に引き込まれてしまい、あっという間に読了します。住井先生が逝去されているので続編を読むことができないのが残念でなりません。
日本の影の部分
明治維新が終わってもこの小説にでてくる貧しい人々は昔のまま・・・
小学校の道徳の時間にこっそり読んだ「水平社宣言」の
「水平社はかくして生れた。
人の世に熱あれ。
人間に光あれ。」
に衝撃を受けて10何年、やっとこの本を正面から読めるようになった。
「水平社宣言」が出来るまでどれだけの悲しい涙や血や汗が流れたことだろう。
すごく分厚くて、内容も濃いけど、日本人なら絶対読まなあかん本やと思います。
みずみずしい文章です
被差別部落問題を取り上げた有名な本です。
被差別部落の地域は、自分自身が産まれていない時代、場所はこんな状況であり、こんな心づもりで生活していたのだ。と知らされる内容です。
この小説を読む以前に、被差別部落に生まれたルポライターの部落問題の本(差別された経験は特に無いという人)を読み、最初から重い気持ちで読むのは止めようと思っていました。
この本のように、被差別部落の人は辛い経験をするのだろうという印象は持っていたし、時代背景も違う二つの本だけれども、この本だけ読んで一方通行の考え方に偏りたくなかったので。
主要登場人物達の気持ちよい性格、痒い所まで届く住井さんの文章(この人はこう思っているはずだ、こう思ってほしいと考えている脇役の登場人物たちの台詞もきちんと書いてくれている)は読んでいて本当に嬉しくなります。
本自体の部数も多いですが、次が気になりどんどん読み進んでしまいますよ。
とにかく著者の知識の情報量、筆の運びなどにぐんぐん心を引っ張られました。
登場人物が多いので、すぐどんな人物かと思い浮かべたいと思ったら、人物関係図をメモしておくと便利。
