土と兵隊・麦と兵隊 (新潮文庫)

レビュー

読むべき書。

従軍記や戦争文学で必ずあげられる名著である。
「土と兵隊」は日記という形式で、弟へ当ててはいるが、
独白に近い印象。平易な文体で当時の実状がよくわかる。
「麦と兵隊」についても、戦場の混乱振りや当時の状況を
推し量ることができ、非常に味わい深い。

一度は、読んでおきたい作品である。

日中戦争時における戦記日記

火野自身が戦記日記、と語るこの作品は、当時の事実の重みがある。日記、というが今思うとああだった、というたぐいはない。中国の景色の描写と共に当時そのものの感情と出来事が書き連ねてある。同胞を殺した敵を倒したい。それでも、死にたくない。生きたい。生命の重さと魂の絶叫が、本の根底にこびりついている。死体を見ても何も感じなくなってきた人間としての感覚の麻痺から、中国農民の素朴さに安堵する心まで、ここには日中戦争を生きた人間の、心の闇が浮き彫りにされている。

行軍の厳しさ

土と兵隊、麦と兵隊は行軍の様子と作者の思いを日記形式で綴った記録です。話の展開が遅く、大きなクライマックスもないため、娯楽としては物足りなさがあります。

文章の大半を占める行軍の過酷さは現代の日本人には想像できないであろうと思われるほど凄まじく、当時の日本の兵隊たちへの敬意が自然とわいてきて、なんだか感動します。まるで超人のような体力と精神力です。