- 書名: 逆説の日本史(11)戦国乱世編 朝鮮出兵と秀吉の謎 (小学館文庫 い 1-18)
- 作者: 井沢元彦
- 出版社: 小学館
- 出版日: 2007-06-06
- 定価: ¥ 690
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レビュー
歴史を流れで理解できます
司馬遼太郎の小説中に度々登場する『閑話休題』。実はあれで時代背景に突入して登場人物に心だけなく頭もシンクロしてしまう。この本は全編が閑話休題のようでアッチコッチに飛び回っているようで、すんなり頭に入ってしまう。歴史を流れで読むには面白い本ですね。ただ作者もおっしゃっているように、教科書で勉強する真説(?)が頭に入った人が読むと面白さ倍増かな。
信長・秀吉・家康と連なる新たな歴史観
今までは信長、秀吉と家康三者の行った事業を別々に捉えていたが、本書を読むにつれて
例えば宗教政策に対する態度など、三者一体を通じて見なければ、天下泰平を目指し
権力者が苦労し、改善してきた道のりが見えてこないということが分かった。
また、本書で書かれている「信長の後継者となることを身近に予期していなかった秀吉の不運と
それを補った権謀術数」は、秀吉が天下を統一したことを当然と知る自分にとって斬新な視点だった。
歴史においては、後追いで現代人の価値観で見ては決して見えないものがあるということを
再び痛感した。
文禄慶長の役に対する無知
シリーズ11巻は秀吉にフォーカスされます。この人は太閤記を通じ、日本で最も立身出世を成し遂げた人として有名であり、「これ以上何か新しい事実なんてそんなに無いだろう」と思っていましたが、これが大きな間違いでした。
そもそも秀吉に6本の指があったと言う事実が、なぜここまで知られていなかったんでしょうか?羽柴秀吉と言う名前にも、これだけの裏の意味があったとは、予想も出来ませんでした。
最も驚いたのが、文禄慶長の役に対する見方です。これを日本と朝鮮の当事者同士と言う枠組みで見ていたら、いつまで経っても真実は見えてこない、と言う事を説明されるまで疑問にも思いませんでした。
こういう目鱗を、秀吉と言う日本人にとってポピュラーな人に対しても出来てしまうところが、著者のスゴいところだと感じました。
気宇壮大な唐入りの謎
"怨霊史観"に基づき、歴史の通説に対する鋭い「逆説」を放つ本シリーズも、いわゆる一級史料が多く現存する鎌倉時代あたりから、読者を驚かせる程の「逆説」の輝きが感じられず、苦しい印象が強かった。まして、本作のテーマは豊臣秀吉である。通説以上の論が出るとは正直期待していなかった。そして、朝鮮出兵(唐入り)までは、その通りとなった。著者が新説と力説する論は、本能寺の変以降の秀吉の権謀術策、大仏建立の謎、有名な太閤検地の意義など個人的な見解を越えるものでは無かった。
そして、5章の朝鮮出兵である。これは通説でも、私の見解でも、西郷隆盛の征韓論と同じく武士の不満を抑えるため(平和になると武士の出番が無くなる)と解釈していた。一部の秀吉の耄碌説は私も信じていなかった。しかし、著者の気宇壮大な主張が正しいとなると、同時に秀吉(信長)の東アジア経営の雄大な構想が明らかとなって興味深い。著者はこの立証のため、当時の朝鮮半島の状況は勿論、現在の東アジア情勢も交え、綿密に考証して行く。全500頁のうち、約150頁をこの朝鮮出兵論に割いている程である。この5章だけでも読む価値があると思う。
シリーズの中でも、歴史を点ではなく線で捉える事の重要性を感じさせる一作。
ヒデヨシの謎に迫る良書
当たり前だと思っていたことですが、よくよく考えてみると秀吉時代は謎が多い時代です。
なぜ秀吉は織田家の家臣だったのに織田家の人間を差し置いて天下人になれたのか?
なぜ豊臣性に名前を変えたのか?
秀吉は大坂で政治を行ったが、なぜ大坂時代が無いのか?
なぜ秀吉は刀狩に成功したのか?
なぜ秀吉は海外派兵を行ったのか?
なぜ朝鮮「征伐」なのか?
これらの疑問に次々と快刀乱麻を断ちます。
次々に解説がなされていて、どれもすごく論理的です。
まるで推理小説を読んでいるかの様な爽快感があります。
