- 書名: 逆説のニッポン歴史観―日本をダメにした「戦後民主主義」の正体 (小学館文庫)
- 作者: 井沢元彦
- 出版社: 小学館
- 出版日: 2004-12
- 定価: ¥ 730
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レビュー
客観的な文章が魅力
井沢さんは、物事について自らの意見を主張をするときに、決して相手方を必要以上に罵ったり、感情的に誹謗したりしません。見事なまでに全くしないのです。そんなことをしたら発言している自分自身の価値を落とし、結果的に言葉の説得力を失うことを戒めておられるのでしょう。チェスを指すように冷静に追い詰める。自分の論拠の弱点も認める。相手の言い分の的を得ている部分は評価する。そうしながらフェアプレイで核心をついていく。抜群の説得力です。何度読んでも飽きません。それだけ価値がある評論なのでしょう。批判されている側が、これを読んでどんな反論をするだろう、と考えても、何も言い返せずにムスッとした顔で逃げていく場面が想像できるだけです。決して間違いを認めて謝罪や感謝などはせずに。テレビの議論番組は意見を押し付け合うだけで結論がでない、くだらない、という方にこの本をおすすめします。「核心をついていく」ことに触れるのは、人間の快感のひとつであることをこの本は教えてくれます。
朝日新聞の「病理」
朝日新聞社は脇が甘い企業です。よく批判されます。資本主義社会に大企業として存在しているにもかかわらず、共産主義の理念を売り物にするため、そこに矛盾や欺瞞が生じ、堕落するのは当然の帰結だと思います。
この本は朝日新聞や進歩的文化人などの矛盾や欺瞞、堕落を徹底的に暴いた本です。
この本を読めば、彼らが好んで使う、平和、平等、人権などの戦後民主主義的な発言は建前に過ぎないのがよく分かると思います。
戦後「進歩派」の罪を斬りまくり、日本の進むべき道の示唆に富んだ好著
本書は著者によるSAPIOでの97年から00年にかけての連載をまとめたもの。本書前半の矛先は、日本は民主主義・言論の自由が保障されている国だからどのような意見を述べても構わないけれども、戦後日本の「進歩派」(朝日新聞、岩波書店、文化人、社会党、日教組等)によって展開された、社会主義国の現状について十分な検証を行わず、それらの国の主張をたれ流し礼賛するだけ、しかも責任をとる覚悟のないジャーナリズムの姿勢に向けられている。北朝鮮を楽園であるかのように報道し帰国運動を進めた罪を事実と証言で追究する筆致の切れ味は抜群で私も初めて知ることが多かった。社会主義幻想が崩れ、国家による拉致という犯罪が明らかになった今、国民の眼から鱗が落ちたかと言えばさにあらず。著者の眼は実社会では能力の差があって当然なのに悪平等を押し付ける教育のあり方、メディアとお役所の「癒着の温床」である記者クラブ制度にも向けられる。石原都知事の「三国人」発言騒動を覚えている人も多いかと思うか、メディアの無知の下いかに偏向報道が行われたかを知ると暗澹たる思いになる。さらに井沢氏の著作に親しんでいる人ならば、聖徳太子以来の「和の精神」優先の政治の弊害、そして自衛隊を嫌い憲法9条を墨守することの愚かさを十分承知しているだろう。だが、この度の参院選で護憲のお題目を唱える声をどれほど耳にしたことか。そういう人には是非本書を読んで欲しい。最後に著者は今の日本には官僚に代表される既得権益勢力をねじふせる織田信長型政治家の登場が必要と説き、私も全く同感である。しかし、衆参ねじれ現象が続くだろう現状の下で和優先の中途半端な政治が行われるとすれば、日本の病理の治癒は当面期待できず、残念至極である。
昨今の世論の“右傾化”について考える上で
近年、ネットのブログ等を中心に所謂「進歩派」と呼ばれてきたマスコミや文化人に対する批判を見ない日は無いといえるほど眼にする機会がありますが、本書では一昔前まで我が国で力を持っていた「進歩派」が如何なる存在であったのかについて初めての人にでもわかりやすくまとめられています。
内容的には2000年に刊行された単行本の文庫版ということもあって、20世紀の終わり頃に井沢氏がSAPIO誌上にて連載されていたものが中心ですが、戦後日本において一部のマスコミや政治家、文化人、教育関係者が自らの思想を押し付けるばかりに、事実を歪曲しありもしない事を捏造して世論をミスリードしてきたという事実を深く認識する事が出来ました。日本やアメリカを叩くためならなりふり構わずという印象がありました。井沢氏が本書で述べているように、民主主義国家では個人が如何なる思想を持とうと自由ではあっても、自らの思想に都合のいい様に事実を捻じ曲げたりありもしない事を捏造する事は許されないというのは実に当たり前な事なのに、「進歩派」にはそれが出来ていないという事には呆れるばかりでした。ネット上で批判、嗤いの対象として俎上に載せられても文句は言えないと思います。
近頃マスコミにおいて世論の“右傾化”を危惧する声が唱えられていますが、本書でも述べられているマスコミ等のデタラメさを多くの一般国民がネットを通して目にするようになり、かつてのような世論に対する影響力を既存マスコミが行使できなくなってきている事に対するマスコミ側の焦りのようにも感じられます。“右傾化”を危惧するマスコミ側も大いに問題だらけである現実を思うと、本書で述べられている事も充分に納得出来るものがあります。色々な意味で必読の書であると思います。
タイトルと内容がミスマッチ
1997年から2000年にかけてSAPIO誌に連載された記事の文庫化である。
「逆説の歴史観」「日本をダメにした戦後民主主義」という刺激的な書名に惹かれて手に取ったが、内容はほとんど朝日新聞批判だ。
従軍慰安婦問題、北朝鮮問題、南京事件、日の丸、自衛隊、憲法改正など、左派右派で議論がまっぷたつに割れる問題を正面から扱っている。朝日新聞が左寄りとみられているため、朝日の批判者である井沢氏は右派と見られやすいが、議論そのものは事実をベースに展開しようとしており、左右はさておき、論旨にはまずまず説得力はある。
ただ「大新聞は世論を形成しているので社会の公器である、であるから偏向報道はけしからん」という著者の主張にはやや疑問がある。ほんとうにそうだろうか。新聞をそんなに真剣に読んでいる人はどのくらいいるのか、と考えると、そこまで目くじらを立てなくても、と思う。恥ずかしながら筆者は、一面の見出しを眺め、ひっくり返してテレビ欄、一枚めくって三面記事、くらいしか見ていない。こんな人間が半分くらいはいるのではないか。新聞の世論形成力は識者たちがいうほど大きくないように思えてならない。
大新聞が世論をリードし形成する、というのはメディア側の大変なうぬぼれで、実は大衆、社会が望む記事を書く新聞が残っているだけなのではないか。戦時中の大新聞の戦争賛美記事(『読んでびっくり朝日新聞の太平洋戦争記事』など)を見ると、特にそう思う。
朝日に限らず、大新聞を週刊誌が攻撃する、という構図はよくあるが、どうも業界内の喧嘩という気がして、辟易してしまう。もちろん思想やイデオロギーを戦わせることはムダだとはいわないが、所詮は同業者、である。
朝日新聞の「偏向報道」問題に興味をお持ちの方にはお勧めします。ただし逆説でもなく、井沢氏の歴史観も見えません。タイトルと内容が異なるのでご注意を。
