梯(きざはし)の立つ都市(まち) 冥府と永遠の花

レビュー

筆者の虚心な世界観が伝わってくる作品集

「ハゲワシと少女」のピュリッツァー賞受賞写真を撮影したカメラマンの苦悩をモチーフにした「黒よりも黒く」、学生時代の旧友とクラスメートの女生徒について語らう「闇の中の白鳥」、自宅前の踏切を巡っての「踏切」など、短めの文章八篇を収録。

日野氏の作品はフィクションとエッセイの境界をぼやかしたような、独特の印象を持つものが多いのですが、この作品集もそうした作品が中心となっています。癌との闘いを経て、宇宙という大いなるものとの関係性を見つめ、生物としての人間が存在する驚異を静かに見つめる日野氏の文章には不思議に心をざわめかせるものがあります。筆者の虚心な世界観が伝わってくる作品集。

言葉は隕石になる

日野啓三の作品に親しむようになったのは、ごく最近のことです。前期の作品は、私的には幻想性があまりにも過剰で、ちょっとどうしたらいいのか理解できないものでした。ただ、ここのところの作品(台風の眼以降)は、幻想性が薄まり、人の肌合い的な要素(表現が悪いですが、人という確かな存在に測量船を下ろしていく、ような)が加味されて、とても親しめるものが多くなってきたような気がします。