Living Zero(リビング・ゼロ)

レビュー

現代への啓示

本書は、単純にポストモダン的などという言葉で括りたくは無いような、異質で奇妙で正体が曖昧な、一応エッセイであろう、魅力ある一冊です。

本来は科学者になりたかったという日野氏は、文系/理系という既存の二項対立に捉われず、進んで科学の進歩を受け入れ、現実を肯定し、文学・科学・哲学・宗教学・地理学・生物学など、あらゆる知識ないし情報を包括的に結びつけ、世界を考究する人です。特に本書は、氏の科学的好奇心の側面が強調されているように思え、「科学を文学作品で描く」とでも言えそうな具合の、かなり独自な作品です。

二十年以上前に書かれた本書ですが、『球体の悲しみ』や『夢の奥に向かって目覚めよ』などで、人類の自然な情報の地球規模での交換を細胞レベルで考察し、メタ次元の「前方からの侵入」を提示し、つまりは、現在のこのインターネット社会の在り様を、既に予感していることが驚きです。これまで氏の著作は多く読んできましたが、その中でも本書の異質さは随一で、一読した程度では理解し切れぬ妖艶さのようなものを感じました。池澤夏樹さんも本書に影響を受けたことで『スティル・ライフ』を書いています。しかしながら、『断崖の年』の中で日野氏は自らこの作品を否定しています。何はともあれ、妖しく蠢く意識の渦を体感してください。