あの夕陽

レビュー

20年遅れでの芥川賞作家

『あの夕陽』。タイトルは普通すぎて何のひねりもありません。内容もごく普通の日常を描いていてこれといったひねりはありません。でもこのタイトルが、作品の内容から雰囲気からすべてを象徴していて、それでこそ第三の新人世代の面目躍如といったところかもしれません。
内容は、主人公に女ができて、夫婦が離婚へと向かっていく過程を描いたもの。ありきたりといえばありきたり。普遍的といえば普遍的。

特徴は何といっても、タイトルに代表されている通りの全体的なけだるさ、やるせなさです。その辺が時代を感じさせて、ある意味新鮮でもあります。西日の差し込む安アパートに住み、銭湯に行き、男は会社の歯車として家庭をあまり顧みずに働く。この辺りの描写はかなりいい味が出ています。

等身大の主人公、等身大の文章、等身大のタイトル……とにかく地味です。万人にオススメできるものではなく、ある意味マニアック好み、またはクロウト好みですかねー。