天皇の料理番 (集英社文庫 111-C)

レビュー

痛快! 料理活劇もの!

確か、かなり昔に本書と同じ『天皇の料理番』というドラマがありましたが(堺正章主演)、当時子供ながら感銘を受けたドラマで、その原作と思い読みました。

伝記ものなのでもっと固っ苦しいかと思いましたが、文体も軽やかで本当に楽しみながら読むことができました。
思わず「ぷっ」と吹き出してしまうシーンも多く、田舎においてきた嫁がいきなり上京し、その夜にがっつくシーンなど、にやにやしてしまうエピソードもあり、主人公の生き生きした人生を知ることができます。
これぞ、冒険活劇ならぬ、料理活劇って感じですね。

皿洗い時代に、職人というか料理人の厳しい世界というか、ヘマをするとぼこぼこにされるあたり、上下関係がはっきりした古い日本がここにはあり、己の道を情熱を持ってまっすぐ進む素晴らしさを教えてくれる本だと思います。

西洋料理とは

 1979年に読売新聞社から出た単行本の文庫化。
 著者は小説よりの伝記ものを得意とする作家。本書で取り上げられているのは、「天皇のコック長」と知られた秋山徳蔵。しかし、作中では名前が「秋沢篤蔵」となっているように、かなりフィクション色が強くなっている。
 福井での少年時代、料理との出会い、上京、最初の職場、フランス渡航を決心するまで、ヨーロッパでの生活、帰国して宮内省に勤めたこと、皇室の人々とのエピソードなどが軽快な筆致で描かれている。秋沢のあくの強い性格が生き生きとしていて、楽しい一冊だった。
 小説としてはなかなかのもの。ただ、私は皇室の料理について知りたくて読んだのだが、その点ではあまり得るものはなかった。

奇想天外な行動などに時々ハラハラしました

 福井の裕福な家庭出身のワンパク少年(ワンパクというより悪ガキ)が 天皇家の料理人になるまでのノンフィクション。明治の時代に西洋料理を究めようと、フランスへ行くなどの体験が書かれている。また福井にお嫁さんを残して東京に修行にくる様など今では考えられない。長い物語りですが、非常に楽しく読んだ。奇想天外な行動などに時々ハラハラしました。

長いけど、読み応えあり

時代は日露戦争の頃、福井のわりと裕福な家庭の次男坊として生まれた少年が主人公です。この人は実在しました。東京から来た軍用の料理人さんと知り合い、洋食をはじめて食べさせてもらう。その味のうまさが忘れられず、東京の上京し西洋料理の道をひたすら究めようと努力し、いくつかの名店で修行した後、ついにはフランスまで料理の修行に行ってしまう。この頃、学問のために留学する日本人はそれなりにいたけど、料理のために留学する日本人はこの主人公で二人目です。本場フランスでも始めは下っ端として入れてもらい、腕一本でどんどんのし上がっていき、やがてシェフと呼ばれるまでに上り詰めた。そんな折、天皇ために料理をつくらないかと大使館に言われ、フランスでの修行を終わらせ、宮内庁内での料理人としての人生が始まる。ついに日本の西洋料理のトップに立ったわけです。時代は代わり、昭和になり、戦争に負け、それでも尚天皇のために料理をつくり続けた男の一生を描いた長い作品です。長いわりには読みやすくって、一つの道をひたすら究めようとする職人魂を感じられる作品です。