台風の眼 (講談社文芸文庫 ひA 4)

レビュー

浮遊感がいい。

「墓はからっぽだな」とゴーストが言った「墓石があるだけだ」

この始まりに強烈に惹かれてこの本を購入した。ゴーストとは言ってもオカルト話ではない。たぶん自分自身との心の会話ではないだろうか。この本には、全体でひとつのストーリーがあるわけではない。ただ淡々と、思い浮かぶままに過去に経験したと思われる物語がつづられている。ベースにあるのは「死」だ。しかし、悲壮感を伴わず、第三者的な視点から描かれている。その視点は次々に移り変わる。それに似ている感覚は「夢」だろうか。そんな文章の心地よさに読者の自分も漂い、一気に読んだ。