風来忍法帖―山田風太郎忍法帖〈11〉 (講談社文庫)

レビュー

何故か心に残る本

忍法帖シリーズに外れはない、と言われ読んだのはもう10年も前の学生の頃。
本当にどの作品も奇想天外、楽しませてくれる作品ばかりで、
当時の講談社シリーズで全部集めてしまったことを思い出します。

その中でも今思い出してまた読みたいなぁ、と思ったのが『風来忍法帖』でした(他にもあるけど・・・)。

最初は香具師どものとんでもなさに笑い、麻也姫との出会いから始まるストーリーのめくるめく展開に酔い、笑い。いつの間にか巻き込まれた女忍たちが登場し、後ははらはらしながら泣けてしまって泣けてしまって。

忍法帖の中でもちょっと下系の描写は多い方の作品ですが、シリーズ中数少ない純潔のヒロイン、麻也姫とそれをとりまく香具師たちを中心とした後半の物語展開は、初めて読む人にも受け入れやすい作品なんじゃないかなと思います。

ろくでなし達の夢の後……

山田風太郎先生は、それほど気に入ってなかったみたいですが、充分すぎるほど面白い作品です。
戦国時代に、香具師として生きる『ろくでなし』七人達の破廉恥で、豪快で、悪漢そのものの生き様に最初は驚かされますが、底抜けに明るい彼等に、不思議と魅力を感じる作品です。
自分達のやっている事を棚に上げ、恥をかかされたと言って、麻耶姫を逆恨みし、彼女の貞操を奪おうとする彼等。
姫を守るは、魔人の如き風摩忍者の三人。
しかし、何の悪戯か、姫を守る側と、姫を奪う側が逆転し、『ろくでなし』達が姫を守る立場に。
この逆転が面白く、また、麻耶姫に対する感情が徐々に変わっていく『ろくでなし』達も熱く書かれています。
ストーリーの面白さ、ヒロインの麻耶姫もかなり魅力的で、最後まで一気に読んでしまう作品です。
最後の哀しくも、拍手を送りたい『ろくでなし』達の生き様に、涙……

虚実の見事な融合

 史実に八犬伝的ファンタジーをふんだんに盛り込んだような作品。ヒロインの麻也姫には「甲斐姫」という実在のモデルがあるが、風太郎はこの日本のジャンヌダルクを更に魅力的なキャラクターにしている。本当の主人公は下々の世界でたくましく生き抜いてきた7人の香具師で、この作品が長いのは前半で彼らの生き様を詳細に描写することによって、読者に感情移入しやすいように準備しておくためだ。
 本来とうてい交わることのない二つの身分が、運命的出会い、突然生まれる強い人間的な情、一念の成就にかける執念と行動力、多くの悲しい出来事を共に乗り越えるうちに生まれる共感を通じていつのまにかその垣根が消え、最後に一つになるのが感動的だ。憎らしいまでに強い風摩忍者に力を合わせて立ち向かう香具師と(その中の一人悪源太にメロメロの)7人のくの一といつの間にか読者は一心同体となり、連帯感と悲哀をわがことのように感じてゆく。明るさと悲しさが同居したラストは得も言われぬ余韻を残す。
 あらゆるものに恵まれ安全な環境で長生きを(おそらく)する現代のわれわれは、その長い人生の中で、彼らが見た生命のきらめきをたった一度でも経験することがあるだろうか。
 

これだけのボリュームもラスト一行の為。

シリーズ中Aランクの作品だと思います。

忍者対香具師のチーム戦といった様相の本作。
正直、どうみても武芸に素人の彼らに歩があるとは思えない。
しかも麻也姫と出会う前の彼らの所業は現代ではギャングまがいの悪行三昧(しかし、愛嬌はありますよ)
そんな彼らがアイディアと勇敢さを以って立ち向かう様は痛快且つ悲壮的。

シリーズ中、ボリュームは最たる部類の本書だが、テンポが良いので2・3日あれば充分読破できる分量かと思います。

そして、相変わらずラストには思わず涙。





戦国の野の匂いが伝わってくるような傑作

~忍法帖の中でもひときわ人気のある今作。
前半は香具師たちの痛快珍道中、そして後半は想像を絶する死闘の開幕。長編小説と短編小説の構成の違いを見せつけてくれます。
最強の風摩忍者三人に、凡人の香具師七人はどう立ち向かうのか?!個性派ぞろいの香具師たちに初めは何なんだこいつらと思いながらも、姫君を命がけで守る彼らの姿は勇敢であり、無惨で~~あり、滑稽ですらあります。
底抜けに明るい話に、これほど涙したことはありません。~