- 書名: 魔界転生(下)―山田風太郎忍法帖〈7〉 (講談社文庫)
- 作者: 山田風太郎
- 出版社: 講談社
- 出版日: 1999-04-15
- 定価: ¥ 790
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レビュー
奇々怪々
小西行長の家臣だった森宗意軒は由比正雪、紀伊藩主徳川頼宣と手を結んで、江戸幕府転覆を企む。森宗意軒は、自らが編み出した忍法「魔界転生」によって、剣豪たちを黄泉返らせる。天草四郎時貞、荒木又右衛門、居合の田宮坊太郎、宝蔵院流槍術の宝蔵院胤舜、尾張柳生流の柳生如雲斎、江戸柳生流の柳生宗矩、宮本武蔵ら名だたる剣豪たちが転生した。魔界から転生した彼等は人の心を失い、闘うことのみに楽しみを見出す悪鬼と化した。そして彼等の野望を挫くべく、この世代を越えた剣豪オールキャストに立ち向かうことを決意したのが、我らが柳生十兵衛であった・・・
山田風太郎の物語世界は奇想天外で奔放な想像力に充ち満ちている。あまりにも荒唐無稽で現実離れした舞台なのに、そこで演じられる活劇は妙に生々しく、不思議な迫力を備えている。それは緻密な「ゲームのルール」をはじめとする筋書きの巧さも勿論だが、人物がしっかり描かれているというのが最大の要因だろう。突飛な設定であっても、超人が次々と登場しようとも、常人の想像の域を超えた戦闘が展開されようとも、人間の欲と情が描き込まれていれば、それは「リアル」なのである。これぞまさに虚実皮膜。
伝奇小説の最高傑作!
下巻から、本格的な戦いになります。
特に、父である柳生但馬守との勝負と、心理描写は凄いの一言!
恐るべき魔人達相手に次々と仕留める十兵衛も凄まじいが、やはりなんといっても宮本武蔵!
どの死闘も凄いが、やはり武蔵との勝負は、最終決戦に相応しい迫力!
激しい剣撃戦ではなく、「達人対決」らしい、一瞬の勝負の妙が面白い!
この小説は物語と言うより、歴史上のIfだ。
戦国時代に間に合わなかった剣の達人、柳生十兵衛がもし、全盛期の宮本武蔵、荒木又右衛門、父、柳生但馬守、柳生如雲斎、宝蔵院、田宮坊太郎と戦えばと言うIfだ!
そのIfを存分に楽しめる伝奇小説、それが、『魔界転生』だ!
魔界転生
山田風太郎氏自ら「忍法帖で1番いい作品」と述べている本作。主人公の柳生十兵衛が転生した名だたる剣豪達と、手に汗握る激闘を繰り広げている。
話の構成、文章の巧みさ、スピード感。
どれをとっても秀逸である。
山田風太郎を読む上で、是非とも読んで欲しい1作。
吉川英治VS山風
最後の武蔵VS十兵衛戦は、作者・山田風太郎が尊敬しつつも一方であげあしもとってしまうような大作家・吉川英治への挑戦でもある。吉川版『宮本武蔵』では負ける小次郎側に十兵衛を配置する!
さて、ここからどうやって吉川英治に負けずに、己の分身・十兵衛を勝たせるか、一行一行の単位で作者の気合いがギリギリと入っているのだ。作家として脂ののりきっていた山風の鬼気迫る文体が堪能できる。
ただのエンターテイメントとしてではなく、山風という作家を知る意味でも、この対決は重要なテキストであろう。
転生衆が十兵衛以上に魅力的で強すぎた
上巻の続きで柳生十兵衛が転生衆たちと闘うのであるが、主人公を十兵衛一人にしてしまっては彼が転生衆に勝ち続ける構図になってしまう。
従って、十兵衛よりも実力の劣る初めの二人までの闘いは面白かったが、
それ以降の特に十兵衛以上の実力を持つ転生衆との闘いには幸運、奇跡、
敵の裏切りなどでまとめるしかなく、どうしても話しに無理が出てしまった。
なまじ転生衆が魅力的だっただけに、こんな勝ち方をされては読者は
要求不満になってしまう。この本を傑作とする人は多いが、私は
前半は傑作だが、話のまとめ方がまずかったと思った。これは
武蔵を初めとする転生衆が柳生十兵衛以上に魅力的に感じたことが原因である。
逆に十兵衛の方に感情移入することができれば、非常に面白い
作品と感じるであろう。しかし、私は転生衆の方に魅力を感じて
しまったので、この結末には割り切れなかった。
もしも、十兵衛を出さずに主人公を転生衆のままにして、彼らが活躍するも
及ばず敗れていく形にすれば甲賀忍法帖に並ぶ傑作になれたのにと思う。
それと弥太郎の撤退戦はまったく無意味ではなかろうか。
