- 書名: 天池
- 作者: 日野啓三
- 出版社: 講談社
- 出版日: 1999-05
- 定価: ¥ 2,100
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レビュー
心の中の湖
本書は、群馬県から日光に抜ける山中の国道沿いに実在する湖をモデルにされた作品で、その真ん丸ではなく歪に捩れた湖を通して、人間の内面や世界の真実が描かれた作品です。日野氏の最後の長編作品です。
読んで思うことは、氏のエクリチュールがかなり熟成されており、極まった魅力を堪能出来ることです。秋の光または闇に照らされた、湖あるいは山道の情景がありありと思い浮かび、様々な色彩描写で、四季の際立った国である日本の情緒を再確認させてくれます。
湖の水面に写ったひび割れた月光の描写や、稲妻のシーンがやはり強く印象的ですが、本書においては、その山場である稲妻のシーンの後の、「Z 光る闇」と「Epilogue」における描写で、何か包み込まれるような感覚になり、この作品を執筆中に二度手術したという日野氏自身の云われも無い優しさに触れることが出来、本質的には、そこにこそ強く感動しました。
これは、『東京タワーが救いだった』(『断崖の年』収録)というエッセイの中で、「世界(悪性細胞をも含めて)に対して優しく全体的であることを、詩的というのだなと思い、もし無事手術を終えて生きのびられたら、自分もそのような文章を書きたい、ととても素直にそう思った。これまではほんの一部のごく例外的な作品を除いて、そうでなかったと。」と氏は書かれていますが、その具体的な実行が本書なのだと思いました。
何はともあれ、日野文学の集大成的作品であり、傑作です。人間や世界の闇や虚無や廃墟を認識しつつも、最後には優しさを忘れないように生きていこう、そんなことを感じさせてくれました。
日野さん、あなたの魂は私の中で常に生き続け、多大なる恩恵を被ってています。真実感謝します。有難う。
生きることの意味は
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