- 書名: 夢の島
- 作者: 日野啓三
- 出版社: 講談社
- 出版日: 1985-10
- 定価: ¥ 1,264
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レビュー
幻想の中に脈動する圧倒的な現実感
中年の主人公が自らの無意識に導かれるように東京の埋め立て地を訪れる。そこは廃棄物が集積され、腐食し、発酵し、そして荒々しい自然の姿を取り戻している。エントロピーの増大の流れの中で反エントロピーの秩序によって出現した小島。その鮮やかなパラドクス。主人公はそこに都市の発展と荒廃、生命体としての都市の生死を透視する。まるで荒漠とした埋め立て地に轟々と風が吹き荒れているような、虚無感と不思議な高揚感が絡み合った傑作。
またこの時期(八十年代中期)の日野啓三の小説は、「都市幻想小説」と一般的には括られているようだが、しかしどんなに現実をなぞってもリアリティーの希薄な小説が多い中、この作品を覆った幻想性の中には、圧倒的な、ひりつくような現実感がみなぎっている。きっとここに描かれた想念こそが、氏にとっては日常という虚妄の向こうのまぎれもない現実なのだろう。
