江戸文学掌記 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

レビュー

夷斎石川淳先生。その筆、いよいよ冴ゆ。

夷斎石川淳先生。戦乱の世にあって、浮世の塵芥のその身に降りかかること、これを蛇蝎の如く厭うて江戸文章の世界に遊ぶ。その才学の発するところは和文の世界に止まらず、漢洋の教養をも修める。
本書は碩学夷斎石川淳先生の江戸留学の折、読者に渡し忘れた手土産といった風情で、連ねられた文字のいざなうところは、まさしく鑑賞の極楽である。
江戸の文人を紹介するといっても、先生の筆は決して賞賛のみに傾かず、時に苛烈を極める。いっさいの妥協を許さぬといった気配だ。
人はどう思うか知らないが、私は本書を紐解くたびに、襟を正したい気持ちになる。