婆沙羅 (講談社文庫)

レビュー

下克上前夜

高校教科書の定番である山川の日本史では触れられず、

小中学生用の集英社版・学習漫画『日本の歴史』では

「ばさら大名」の代表的人物として、流罪に処されながらも

酒盛りをしながら歩いたエピソードが紹介される佐々木道誉が主人公。

南北朝の対立をも利用して、綱渡りの人生を歩む佐々木道誉の

歩いた道筋には、室町時代の有名人の死体がゴロゴロ横たわっている。

南北朝時代の細かい部分は

「筋も脈絡もない、だれが敵やら味方やら、めちゃくちゃの混乱ぶりを

細かく述べようとすれば、どんな人でも途中で筆を投げるだろう。」

ということでバッサリ割愛。

約200ページで南北朝時代を楽しみながら学べてしまいます。

ラストも圧巻ですが・・・・その前の足利尊氏の

「道誉、笑ったな?」のあたりが最高でした。

ラストは圧巻。

中世モノ第三作目にして室町モノの長編第一作目に当たる本書。
トータルボリュームも少なく連作短編(10編)から構成されているので非常に読み進め易くなっています。

各章、後醍醐天皇、足利尊氏・直義、高師直・師奉兄弟、また文化人である兼好法師、世阿弥ら多彩な歴史的人物らが登場し、佐々木道譽がいかに係わり、いかに「婆沙羅大名」として生き抜いていったか、その処世術と生き様が描かれている。

後醍醐天皇が登場する第1話こそ「忍法帖シリーズ」の様に妖しげな様相に彩られているが、2話以降は本格時代小説といった感である。
各編ともに短いながらも、対照的な性格の足利兄弟、高兄弟の暴虐ぶり等、史実を通して描かれているので自然と時代・人物への理解が深まり本書に奥行きを持たせています。

また、終章のラストには圧巻されました。
第9話まで様々な歴史的人物の魔人振りが描かれてきたが、それらを凌駕する演出と新たなる魔人以って読者に迫る筆致には流石と唸らせられた方は多いと思います。

「太平記」等に馴染みのある人にも本書は佐々木道譽というユニークな人物にスポットを当てた作品として愉しめ、また馴染み薄の方にも中世モノへの関心を高め啓発してくれる好書になり得ると思います。

婆沙羅でやれ、婆沙羅でゆけ

後醍醐天皇、足利尊氏、高師直、楠木正成らが活躍する裏切りと復讐の南北朝時代を、婆沙羅大名として巧妙に生き抜いた佐々木道誉の目を通して語る時代絵巻。
忍法帖の山田風太郎先生の作品なので読んでみましたがこれが意外なほどに面白く、さすが先生と唸らざるを得ませんでした。
歴史物というと織田、豊臣、徳川の時代か、源平の時代が人気ですが、この南北朝時代も実はかなり面白いことが分かりました。
この動乱の時代を「これ、ホント?」というくらい巧みに切り抜ける婆沙羅大名、佐々木道誉。好きになってしまいました。

世界一面白い歴史の教科書

南北朝時代は下克上。裏切りの連続です。足利兄弟、高兄弟、後醍醐天皇、楠一族、これらの英雄たちが時には手を組み、時には争いと入り乱れての戦いです。その混乱した流れを佐々木道誉という一人の守護大名の視点から描いたのがこの『婆沙羅』です。面白いお話を読んでいるうちに南北朝時代の歴史の流れが頭の中にすっと入ってくる。これほど面白い歴史の教科書はありません。