新選組全史 幕末・京都編 (角川文庫)

レビュー

新選組通史として読む価値あり

子母沢寛の3部作や司馬遼太郎の「燃えよ剣」に代表される歴史小説で描かれた
新選組像や近藤、土方像を史書を基に丹念に収集・分析し再構築した労作。
通説、俗説を排して史実に迫るべく文庫化に当たっては百枚以上削って
二百数十枚を書き足したという。本書はそれほど著者に取ってかなり愛着のある作品。
一連の氏の新選組本と併せて読むと尚、面白いであろう。

しっかり読んだものの

面白くなかった

「新選組」の史実を描く試みとしては一定の水準にある

昭和初期の子母沢寛の3部作あたりから始まる一連の「新選組」本は、ほぼ全部が「歴史小説」であって、ある歴史学者の言を借りれば「史実とフィクションの心地よい共存」が一貫していたと言って良いと私は思う。

こういうのを「良し」としない(従って、「歴史小説」を殆ど評価しない)私にとって、ここ数年に始まった「史実の新選組」を求める試みは基本的に高く評価している。本書(「戊辰・箱館編」と併せた2巻本と見るべきである)はそういう試みとして一定の水準にあると思う。

本書は従来信じられてきたことの「史実性」を問うのが目的だから、そうした記述が多くなるのは当然であり、むしろそこにこそ本書の意義があると考える。
その上で本書は「新選組通史」であることも求めているので、ボリューム的に大きくなっているのは仕方のないことである。と言っても、文庫2冊。たいした量ではない。

☆を4つにとどめたのは(本心は、3つ半)、著者も基本的に「歴史小説家」であり、多くは史料の引用ではあるけど、子母沢作品を引用するなどあくまで原史料によるべしという「歴史学」の原則の徹底が不十分であることと、こうした試みとしては「先駆的」であるが故に、より新しい出版物と比較するとフィクションの排除という点で、やや劣る部分があるからである。
が、「史実に忠実な、否、忠実であろうとする新選組通史」としてはまだまだ未解明な部分の多いこの剣客集団についての「入門書」としては十分に通用すると思うし、私自身、読了後もしばしば参照している。

悪くはないが

「新撰組の組織の歴史」を史料を参照しつつ年代順に追っています。
それだけならいいのですが、子母沢作品等の史料や一般的なイメージ(沖田総司の容貌等)の間違いを指摘するのに腐心するあまりしばしば話が脱線しているのが気にかかります。

その点新撰組をある程度知っている人にとっては既知の事柄故煩わしく、初心者には戸惑いを感じさせるような気もします。
この本が「新撰組史料の考察」等のタイトルであるなら別段問題はないのですが、「全史」と銘打つ以上、もう少しサラリと流して欲しかったです。

余談ながらこの作者がここまで子母沢本を疑ってかかっているのに武田観柳斎が馬越三郎に恋慕したくだりをあっさり信じている点は疑問です。あまつさえそこから河合耆三郎切腹事件につながるとは此如何。
突飛な解釈で面白くはありましたが。

池田屋襲撃

 池田屋事件の際、山崎烝が変装して池田屋に入りこんでいた
事実は無い。
 また、山南敬助 切腹の際、明里という女性が別れにやってきた。
という話もつくり話。
 と書いてあるので、歴史に詳しくない私はびっくりしました。

 また、蘭方医 松本良順のすすめで残飯で豚や鶏を飼い
「先生の贈なり」とよろこんで食べた。

というくだりを面白く読みました。

 転記が多いのですが、
出典がきちんと載っていますので
興味をもった事柄を
原本で調べることも容易に出来る
親切な本です。
 物語形式の本ではありません。