注文の多い料理店 (角川文庫クラシックス)

レビュー

夢想家の偉大なる生涯

注文の多い料理店は、解説者に拠れば、賢治の刊行した最初で最後の童話集とのことです。投稿者は、賢治を夢想家と書きましたが、それは賢治を貶めるものではなく、詩人は皆、それなりに孤独で大抵は夢想家です。そんな思いがします。この童話集の中には、表題の「注文の多い料理店」を始め、「どんぐりと山猫」「狼森と笊森、盗森」「水仙月の四月」「かしわはやしの夜」「月夜のでんしんばしら」…等々、意味深い作品がならんでいて、その方言の豊かな音楽性は、読んでいて驚くほどです。

宗教性とは、神を身近に感じる力のことを言うが、賢治の宗教性は、圧倒的な神秘感を、森の静けさ、川の流れ、空を行く雲の輝き、風のざわめき、そういうものから神を肌で感じる鋭敏性、感受性、夢想性にあった様に思われてならない。この本の序文で、彼は、「すきとおった風をたべ、うつくしい朝の日光をのむことができる」、と、書いている。「ほんとうに、かしわばやしの青い夕がたを、ひとりで通りかかったり、十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです」序文の言葉は、すでに、詩と言っていい位だ。

東北は詩人の宝庫であり、哲学者の故郷といえる雰囲気を持った土地なのです。人の手の入らない、たくましい自然が今もなお、その息吹を吹きかけている土地です。法華経の宗教的理想を、現実の寒村に適応させようとした賢治の使命感は、周りの者たちにはドンキホーテの情熱にも見えたかも知れないが、賢治の心情は、ファン・ゴッホの心にもつながる事だ。わたし達は、これ等の火の様に燃えた志を得て、苛烈に生きた人々の人生に、ある種の尊敬と、悲劇を感じずには居られない。
もうすぐ、賢治の命日、9月21日がやって来る。

文庫本マニア、必携です。

宮沢賢治が生前に出版した、唯一の童話集の、文庫本による復刻版。これは、素晴らしいです。何よりも、編集が秀逸。一冊の本として、完璧なまでの完成度の高さを、誇っています。一編々々よりも、全部まるごとで、一つの世界を造り上げている所が凄いです。まさに、これこそ、《ワン・アンド・オンリー》な、傑作だと思います。

宮沢賢治の作品を読むと、「大人の為の童話」なんて嘘だと思える。

 「注文の多い料理店」「どんぐりと山猫」くらいは読んだ事があって、「雨ニモ負ケズ」に感動して、でもその程度で、石川啄木との区別が付かなかったんだけどね。いや今でもあまり区別が付かないんだけどね。どっちも岩手だし夭折してるし。ただ啄木の実物は結構間抜けな人間(褒め言葉)なのに対して、賢治はもろに作品そのままなんだね。作品そのものも良かったけど、解説も良かった。

 童話9編の内、先の2編と「狼森と笊森、盗森」「鹿踊りのはじまり」が分かりやすい童話かな。後は、シュールというかナンセンスというか。でもまぁ、「新刊案内」の「著者の心象中に(中略)実在したドリームランド」であるイーハトヴで起きた物語です、と言われると、妙に納得しちゃうんだよね。いや「納得」するものでもないんだけど、童話って。描かれているものをそのまま受け止めればいいんだから。「これは何を言いたいんだろう?」と勘ぐって読んじゃダメ。イーハトヴで起きた出来事をそのまま紹介しているだけなんだから。

 宮沢賢治の作品を読むと、「大人の為の童話」なんて嘘だと思える。「大人の為」になった瞬間に「童話」でなくなる。妙に良かったです。

暇なときにちょこっとよめる。

「銀河鉄道の夜」は長い話が多いし、読んだ後悲しくなって何も手につかないという状態に陥る事もありますが、この本はちょこっと読んで楽しめると思います。お子さんに読み聞かせるのもいいと思います。しかし、ちょこっと読むといっても、やっぱり考えさせられる話ばかりです。