- 書名: 赤い蝋燭と人魚
- 作者: 小川未明
- 出版社: 偕成社
- 出版日: 2002-01
- 定価: ¥ 1,470
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レビュー
暗くて美しくて残酷な童話
いわさきちひろさん版の方も好きですがこちらもまた、ストーリーの閉鎖的で冷たく湿った感じがよく出ている絵がすばらしいです。酒井駒子さんの描く少しあどけなさを残した人魚が運命の残酷さをより引き立てています。本のサイズが小さいのが残念です。
美しい芸術作品
もともと小川未明の童話作品の方を読んだことがあったのですが、酒井駒子さんの絵が加わることにより、初めに読んだときの切なくも美しい印象がより増幅されて、ひとつの芸術作品の様になっています。人魚という美しい少女を通して人間の醜さ愚かさを問うという内容です。酒井さんのかすれたようなタッチ、黒をベースとしている所や、ろうそくに描かれた絵の赤色が印象的で、楽しい話ではないですが、何度も開けたくなる魅力があります。
「人魚は、南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。
北の海にも棲んでいたのであります。」
という、暗くて寒い始まりかたが好きです。
駒子さんしかいない
ずっと心に残っていた物語です。多分、一番はじめはNHKで見た映像なんだと思います。
暗い影絵のような映像で、幼稚園の頃に見た話なのにいつまでもその物語は頭に残っていました。
そして偶然、酒井駒子さんのこの絵本を知って……衝撃でした。
もうこの物語には、酒井駒子さんの絵以外にないだろうと感じました。
黒地を塗ってから描かれる駒子さんの絵はこの物語になんと相応しいことでしょう。
テレビではカットされていたのか、記憶にない最後の一行を読んだ時、鳥肌が立ちました。
美しく悲しい物語
小川未明さんの物語全体が、非常に美しい、また人間の業のようなものを鮮やかに書き出していますが、それに酒井駒子さんの絵が非常によくあっていると思います。だんだんとお金に目がくらんでいく育ての親に、この人魚は一人じっと耐えるわけですが、それでも恩返しをしようと必死になる姿には感動を覚えます。酒井駒子さんの絵も、非常に美しく、また悲しさも伴っています。大人の方にぜひおススメしたい一冊です。
人として失ってはならぬものとは
このお話を酒井駒子さんの素晴らしい挿絵と共に読むと、妙に良寛さんを思い出す。子供好きだった良寛さんは村の子供達を集めてよく一緒に遊んだが、昨日までいた女の子が一人また一人と消えていった。貧しさからやむなく親が娘を身売りさせたのだが、そんな時、良寛さんは己の無力さを嘆いたものらしい。この人魚の娘も売られていくのだが、このお話の中には自分の無力を嘆く者は誰もいない。いるとすれば、作者の小川未明と読者だ。だが、このお話はそれだけでは終わらない。
人魚の母親、育ての親、周りの大人たちを読者は醒めた目で見るに違いない。そして、人として失ってはならないものを失った時にどんな世界が待っているのか?苦難の人生を送らざるをえない中でも前向きに生きた小川未明の恐るべき人間への洞察が込められた名作である。
