反定義―新たな想像力へ (朝日文庫)

レビュー

帝国臣民であること

グローバリズムへの対抗を考え、行動するうえで「事実」を知ることは重要である。辺見は様々な戦地を見聞しており、彼の主張は説得力がある。坂本は思想的には曖昧なところがあり、発言に多少のブレはあるものの、その基本的スタンスには賛同する。
彼らが炙り出すのは、アメリカや日本マスコミによる情報操作によってイスラムの現実が覆い隠されている事実。そして日本の為政者が国民についている嘘である。
また世界は非対象であり、欧米的価値観は普遍性を持ち得ないこと。価値観の押し付けは、まさに先進国のエゴ以外のなにものでもない。
平和主義は単なるお題目ではなく、人命の価値の非対象という現実に即した必然である。それを否定できるのは、帝国臣民の傲慢だ。
昨今の若者の無知と偏見は、自らの物質的豊かさに安住したエゴであることを想起すれば、まずは事実を学び、そのうえで偏狭なナショナリズムに陥るのならば、暗黒の未来が我が身に降りかかったところで責任は他人になすりつけるだけだろうと暗澹たる思いになる。

都合のよい『鈍感力』より、苦渋に満ちた『繊細力』

中年ふたりの壮大な愚痴が延々と続く。
結論などここにはない。
しかしこれは彼らがどうしても言わずにおれなかった愚痴であり
どのような立場の人間も必ず読んでおくべき愚痴だ。

世界に対して鈍感であるほうが楽に生きられることは確か。
しかし世界を救えるのはどう転んでも青臭いほどの繊細さなのだ。
(ちなみに自らポストモダンを看破した中沢新一のあとがきも秀逸。)

情報の非対称

つい先日もイギリスでテロがあった。エジプトでも。
でも報道され、多くの人が悲しみ、怒るだけでもありがたいことなのだ。
アフガン、そして本対談後に状況が急展開したイラクなどでは、
我々の知らないうちに、闇に葬られた命が数多くあるのだ。

本書を通じて、特に、このような「情報の非対称」に気づかされ、
この言葉が脳裏に焼き付きました。

確かに、特に坂本さんの発言などには「青さ」が感じられます。
しかし、現在の外交や国際政治の現場に欠けているのは、
まさに理想主義的な「青さ」なのではないかと思います。
乱文失礼。