臆病な医者 (朝日文庫)

レビュー

南木さんの心象表現を味わう

1999年の同名の著作の文庫化。
エッセイや書評を集めている。芥川賞を取られた後にうつ病の辛い時期を経験されその時の心象や周りの季節の移り変わりの中での想いを綴っている。
火について、という短い文章の中で、患者さんに入浴をしてもよいか聞かれた時、医者は経験により入浴許可のタイミングを会得すると書かれている。そして自分が肺炎になった経験を元に、体が十分に回復すれば自然と入浴を欲してくることを悟る。
そして次の文章で締めくくる。
悩んだら脳ではなくて身体に聞け。幼い日に感じた薪の火のぬくもり、私はいま、身体全部であの穏やかな熱をあびたい。脳ではなく、身体でやすらぎたいのである。

疲れているあなたへ

映画にもなった「阿弥陀堂だより」の作者のエッセイ集です。
私は電車の中で読んでいて、涙が出そうになったり、思わずほほが緩んだりして困りました。作者と同じうつ病の私だからかもしれませんが、最近、毎日が疲れちゃったなと感じている方や、知らず知らずに頑張り過ぎてしまっている方、家族の介護をなさっている方に読んでいただきたい本です。生きること、死ぬことについて考え直させてくれたり、疲れている心をほっこりさせてくれる文章に随所で出会えます。書評も含まれていることもあり、作者が触れている本に興味を引かれ、早速購入したものもありました。
押し付けがましくなく、さらりと読めるのだけれど、深い。そんな逸品です。