ドルジェル伯の舞踏会 (岩波文庫)

レビュー

アルコール

 この小説、あまりに鮮やかな将棋のせめぎ合いにでも喩えられようか、しばしば相手の
ことばや表情、内面への大いなる読み違いをはらみながら、登場人物各々の感情の移り行きを
息をもつかせぬ怒涛の勢いで書き綴る。文体は過剰なまでに簡潔、そして同時にあでやか。
日本語訳でわずか200ページにも満たぬ小説でありながら、ラディゲはこの群像劇を過不足なく
こともなげに描き切った。
 すさまじい密度でたたみかけられた後、のぼせたような心地よい疲労感に包まれる一冊。