山椒大夫・高瀬舟 他四編    岩波文庫 緑 5-7

レビュー

通りすがりのバイオ研究者

高瀬舟が一番印象に残った。
弟を安楽死し島流しになってしまった境遇の主人公(喜助)が淡々と描かれている。
特に、安楽死の場面は情景が浮かんできて鮮烈な印象を受けた。
最も感銘したのは、喜助が「足ることを知っていて」、自分のおかれた境遇を
悲しむのではなく、むしろ全面的に受け止めていることである。
人はこのような境地に達することは本当に出来るのだろうか。
そんなことを感じた一冊である。

幸せとは??

「山椒大夫」は先が気になる面白さでした。
安寿の優しさに感動しました。
「最後の一句」にしろ、なんでこの本の少女は
優しくって強くて芯があるんでしょうか…
なんかかっこよさすら感じます。

「高瀬舟」では、幸せとは何か考えてしまいました。
弟を殺し、島流しになって全てを失おうとも恵まれていると考える喜助、
それとは逆に家庭も仕事もあるが満足してはいない庄兵衛。
結局幸せなんて人の気の持ちよう??

私にはちょっと難しい話もあったかもしれませんが、
お勧めです。

現代小説の祖が鴎外だということが、よくわかります

この短編集、面白いです。
鴎外が50代を超えた大正時代に書かれているのですが、
文体、テーマ、倫理観等、現代小説と何ら変わりません。
特に簡潔な文体の力強さは驚きます。
藤沢周平や松本清張等を連想しました。
志賀直哉や谷崎のようなだらだらした小説、随筆とは全く異なる世界が広がります。
鴎外は現代小説の始祖と言われますが、
この短編集でその意味がよくわかります。
安楽死を扱った「高瀬舟」、嫉妬に狂った女詩人の殺人を描いた「魚玄機」、長い別離の果てに再会を果たした老夫婦の「じいさんばあさん」、「山椒大夫」などどれもお勧めです。

文豪の本は読んで損はないと思う

 まず『山椒大夫』は読んでいてどんどん先が気になるような内容だった。どんどん中心人物が変わっていくのも面白い。後半は疑問におもう部分もあるが、もう一回読み直してみると納得できて深みのある作品だと思う。
 『高瀬舟』は安楽死が主題の話。弟の死の場面は私にはちょっと体が痛くなるような内容だが、だからこそ苦しみが伝わり、喜助の決断した時の気持ちを考えさせられる。庄兵衛と喜助の価値観の違いも書かれており、喜助の性格を考えるのが面白い。
 また、この2作品に共通してでてくる単語があり、森鴎外の作品の面白さを発見することが出来ると思う。