銀河鉄道の夜 (岩波少年文庫)

レビュー

生と死、友情、永遠と刹那

今からずっと昔の夜。町外れの丘を登ると暗闇の中に街の灯がちかちかと瞬く。その光景がいつの間にか幻想へ変わっていく。
ジョヴァンニとカンパネルラはなぜ銀河鉄道で旅するのかを考えると、切なくなります。幻想世界の説明はありません。列車からの風景は、宮沢賢治(ジョヴァンニ)が見ていた世界の反映だし、彼の抱えていた孤独、無垢な精神、理想への憧れだと思います。
ジョヴァンの家の食卓には、牛乳と角砂糖とトマト、それにパンが並んでいます。日本なのに日本でない、ここに童話としての卓越があると思います。
夜の牧場の場面と印刷所の場面も大好きです。
童話ですが、生と死、友情、永遠と刹那が、哲学といっていいほどの高みまで昇華され、描かれています。
大好きな作品です。

特別な夜の世界

この本を初めて読んだのは、小学4年生か5年生のときで、学校からの帰り道でした。どうしてそんなことになったのか、とにかく家に向かって歩きながら、分厚い本を広げて読んでいたのを、はっきり覚えています。歩きにくいし、本だって読みにくいのに、それでも話の世界に引き込まれて、えんえん家に着くまで読みつづけていました。家に着いて、イスに落ちついて、つづきを読みつづけて、とうとう読み終わったときにはたまらなく切ない気持ちと、星空と夜の印象が強く胸に残っていました。けっしてほかにはない、とても特別な夜空の世界。宗教的な意識に関わる会話なんかも現れたりしますが、それが本懐というより、もっと核心に触れようとする旅の物語で、なにより物語そのものと、独特な世界観に打たれます。きっと何かが鮮やかに残る、未完の物語です。